ハーシェル博物館で見た星座早見2006年03月22日 06時52分42秒


ハーシェル博物館(3月20日参照)の内部には、いろいろな天文資料が陳列されていますが、中で気になったのがこれです。

かなり大きな(径30センチ強?)まん丸の星座早見盤です。

何の説明書きもなしに壁にひょいと掛けられていたので、詳細は不明ですが、下に列挙したような非常に珍しい特徴を備えています。

全体の印象からすると、まず間違いなく19世紀前半に遡るものでしょう。星座早見盤の初期の歴史ははなはだ漠然としているのですが、これはたぶんそのミッシング・リングを埋める最初期の品ではないでしょうか。

★ポイント1
 星図全体を覆うカバーがなく、その一部のみが二まわりか三まわりぐらい小さい円盤で覆われている。
★ポイント2
 その円盤に穿たれた「窓」(今見えている空の領域を示す)は、後世のもののように楕円ではなく、真円。
★ポイント3
 各星座や主要な星から点線が放射状に伸び、その名前が外縁部に記されている。
★ポイント4
 回転盤は「窓」を横切る「ブリッジ」上のピボットを中心に回転する。
★ポイント5
 無彩色。星座絵もなく、はなはだシンプル。
★ポイント6
 表面に記された文字情報は以下の通り。
  A PORTABLE PLANISPHERE
  London. Published by J.Cary No.181 Strand

…と、ここまで書いたところで、ふと思いついてGoogleにかけたらあっけなく正体が判明しました(ネット恐るべし)。この星座早見盤は、イギリスの地図製作者、John Cary (1754-1844)の手になるもので、彼が ロンドンのストランド181番地に店を構えた、1791年から1820年にかけて出版されたものでした。

この例から、少なくとも19世紀初頭には既に地図メーカーの手によって、星座早見盤が商品として流通していたことがわかります。

上記のポイント4、5は19世紀後半の早見盤にも例があるので、この早見盤の真の「古体」はポイント1~3に現れています。

同時代の他の作例を知らないので何とも言えませんが、現今の早見盤のデザインが確立するまでには、様々なメーカーの試行錯誤が種々あったものと想像されます。