ロス伯の巨人望遠鏡 ― 2006年03月25日 14時26分09秒
アイルランド貴族にして稀代の天文マニアだった、第三代ロス伯爵(ウィリアム・パーソンズ、1800~1867)が自分の居城、バー城に作り上げた巨人望遠鏡の雄姿。
1905年の消印のある絵葉書。
白黒写真に手彩色したものを原図にカラー製版したもの。
ロス伯は、1840年に口径3フィートの反射望遠鏡を作り、その成功に励まされて、5年後には口径6フィートという、金属反射鏡としては史上最大の怪物望遠鏡を完成させました(旧約聖書に出てくる海の怪物の名をとり、「パーソンズタウンのレビヤタン」と呼ばれました。絵葉書の左奥に見えるのがそれ)。
この望遠鏡は、1786年にウィリアム・ハーシェルが作り上げた、焦点距離40フィートの大望遠鏡(口径4フィート)をもってしても不可能だった、系外星雲の渦状構造を明らかにするなどの成果を挙げましたが、ただ公平に見た場合、その偉容に見合うほど十分な働きはしなかったというのが通説です。
取り回しの悪さに加えて、中部アイルランドの恵まれない気象条件も大きなハンデとなりました。時代的にも、アイルランドを襲ったジャガイモ飢饉が、ロス伯に観測三昧の日々を許さなかったという事情もあります。
彼の死後も、バー城の観測設備は、息子である第4代ロス伯が引き継ぎましたが、1908年に最終的に解体されました。この間、1874~76年にかけて3フィート鏡が別の架台にマウントしなおされ、レビヤタンと並んで天をにらみました。絵葉書の右手前に見えるのがそれです。
現在バー城にある6フィート望遠鏡は、今の第7代ロス伯の指揮により1997年に復元されたものです。
参考:http://www.birrcastle.com/index.htm?mainFrame=http%3A//www.birrcastle.com/main.htm
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