メアリー・ウォード著 『望遠鏡』(4)2006年03月30日 00時43分03秒

1858年、すなわち初版が出る前の年に出現した「ドナティ彗星」のスケッチです。
湾曲した壮大な尾が非常に印象的な図。夜の森にたたずみ、空を見上げる一人の人物が画面を引き締めています。

ウォード夫人は、ここでも単に美しいばかりでなく、まず科学的たることを念頭に置いています。絵の中の星は単なる飾りではありません。下の余白にその名前(ヘルクレス座β、γ…etc)が全て記されており、特定の日時における彗星の天球上での位置を正確に表現しようと試みているのです。

この彗星は「グレートコメット」と通称されましたが、実際に接近するまで、これほどの大彗星になるとは学者ですら予想しておらず、当時の人々にたいへんな驚きを与えました。

ウォード夫人もこの彗星のためだけに本文12ページ余りを割き、その見えの変化を詳細に記述しています。