天文家の自筆書簡…ジェイムズ・サウス(2)2006年05月29日 05時26分09秒

(王立天文学会のロゴ。
モチーフとなっているのはウィリアム・ハーシェルの大望遠鏡。
なお、サウスの肖像は以下で見ることができます。 http://www.npg.org.uk/live/search/portrait.asp?LinkID=mp04201&rNo=0&role=sit


(昨日のつづき)

サウスは王立天文学会の創立メンバーとして有名です。

彼はもともと外科医でしたが、天文学にのめりこみ、ついには本業を捨てました。そして「王侯並みの」私設天文台を建てると、ジョン・ハーシェル(ウィリアムの息子)の助けを借りながら、連星観測で大きな功績を上げました。

そのいっぽうで彼は非常にエキセントリックな逸話に富んだ人物でもあります。

1829年にはパリで当時世界最大の対物レンズを購入し、これが彼の絶頂期でしたが、彼の人生が暗転したのもこのレンズのせいでした。

名匠トロートンに依頼したレンズの据付けが思わしくなかったことに端を発した訴訟合戦の果てに、彼は精神に変調を来たし、相手方をこき下ろす奇怪な広告ビラを作ったり、暴露的な手紙を出版社に送りつけることに力を注ぐようになりました。かつての盟友、G.B.エアリーやジョン・ハーシェルとも絶交状態となり、晩年は孤立した精神生活を送ったようです。

昨日掲げた手紙は1852年6月付け。老いたサウスがMiss Hoodという女性に宛てたものです。内容はフッド嬢に贈った望遠鏡の使い方を説明するというもの。

★   ☆   ★

 「望遠鏡にはもう1個接眼レンズが付属しています。かつてご一緒した際に使ったものほど倍率は出ませんが、月を観測するにはこのほうが見やすいでしょう。彗星を見ようというなら、高倍率よりもこちらの方がはるかにいいはずです。ただし木星、土星、火星、金星には、前の接眼レンズの方が向きましょう」…云々。

★   ☆   ★

孤独で偏屈な老学者と、うら若い(?)未婚女性との天文交流を伝える興味深い内容です。

コメント

_ icco ― 2006年05月29日 22時03分47秒

初めて拝見しました。
これまで天文学に接することはなく、初めて目にするものばかりで新鮮な気持ちになりました。
孤独なサウス卿はフッド嬢には何か安らぎのようなものを感じていたのでしょうか。
とても素敵なブログですね。またお邪魔したいと思います。

_ 玉青 ― 2006年05月30日 00時03分15秒

iccoさま

ようこそお訪ねくださいました。

二人の関係は、たぶんおっしゃる通りでしょうね。
そして、ここでも遥かな天上世界と人間世界との対比から、いろいろな思いが心に浮かびます。

私が「天文学」ではなく「天文趣味」にこだわるのも、私にとっては、人間世界と天上世界との交錯領域こそが重要であり、そこに興味が集中しがちだからなのです。

拙い内容ですが、今後も是非お立ち寄りください。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック