石田五郎 『野尻抱影』 ― 2006年10月31日 22時37分40秒

■石田五郎著 『野尻抱影―聞書“星の文人”伝』
リブロポート(1989)
ああ、今日で10月も終わりですね。
1年は早いなあ…と、毎年飽きもせず繰り返す自分にも感心します。
* * *
さて、昨日は野尻抱影翁の命日でした。翁の業績について、ここで贅言するには及ばないので、もう一人の巨人の名をあげておきたいと思います。
それこそ、この本の著者・石田五郎氏(1924-1992)です。プロの観測者として、岡山天体物理観測所の副所長も務められましたが、一方では東西の文学・芸術に通じ、少壮のころより『星の歳時記』『天文台日記』等、珠玉の天文エッセイをものしました。
この本は、プロがアマを崇拝してその伝記を書いたという、珍しい例です。石田氏は翁を「初代天文屋」に擬し、自ら「二世天文屋」と称しました。退職後は天文趣味の鼓吹にいっそう力を入れようと、張り切っておられた矢先の訃でした。
日本ハーシェル協会々長として、ハーシェル伝の執筆を企図されましたが、その計画が途絶したのも真に悔やまれます。
石田五郎氏が存命であったら、日本の天文趣味のありようも、今とは異なっていたのではないか、そう思われるぐらい大きな存在でした。
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