青い星月夜…『賢治の見た星空』 ― 2006年11月30日 22時50分47秒
藤井旭著 『賢治の見た星空』(作品社、2001)
☆ ★ ☆
シリーズものの途中ですが、ちょっと寄り道です。
畏友N氏より誕生プレゼントをいただきました。この本の存在は以前から知っていたのですが、改めて手にとってみて、その美しい造本に再度感嘆。ありがとうNさん。
賢治作品からの引用と、その作品世界を鮮やかに視覚化した天体写真の取り合わせが素晴らしい。表紙からも分かる通り、ブルー系の色調が印象に残る写真文集です。
「銀河鉄道の夜」はもちろん、「双子の星」「シグナルとシグナレス」「ポランの広場」など、さまざまな賢治作品が登場します。
水よわたくしの胸いっぱいの
やり場所のないかなしさを
はるかなマヂェランの星雲へとヾけてくれ
そこには赤いいさり火がゆらぎ
蠍がうす雲の上を這ふ
上は、本の帯にも引用された「薤露青」という詩の一節。まさに絶唱。
日本の天文趣味に及ぼした宮沢賢治の影響は、実に大なるものがあります。
一見万国共通に見える天文趣味にも、それぞれの文化的背景、言わば「お国振り」があるはずだ…ということを、以前ある場所でスピーチしたことがありますが、こうした本に接した後では、賢治を知らずに空を見上げている異国の人が、何かとても寂しく思えます。
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この本は残念なことに現在版元品切れですが、ユーズドならまだ入手可能のようです。
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