Beautiful Books on Astronomy … レイノルズ『天文学および地理学図集』③2006年12月01日 06時55分47秒

なんと、もう12月ですね!早いな…と、これも毎年思うことですが。

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さて、例の本の続きです。

ビューティフル・ブックスと銘打ったわりには、保存状態が悪く、紙がかなり褐変しています。古書業者なら、こういうのを「美本」とは言いませんね(汗)。

それはさておき。先日の図版を順光で見ると、こんな感じです。
(版型がA4より僅かに幅広なので、スキャニングするとき右端が少し切れました。)

Transparent Solar System「太陽系を透かして見れば(?)」と題された図。
星の位置に小穴をうがち、裏面から手彩色の薄紙を貼り付けてあります。
それぞれの惑星、小惑星、衛星は、赤・青・黄・緑・紫と塗り分けられており、非常に手がこんでいます。

一昨日の写真だと、色がよく分かりませんが、光に透かして見ると、漆黒の宇宙にカラフルな星が並び、目を楽しませてくれます。

Beautiful Books on Astronomy … レイノルズ『天文学および地理学図集』④2006年12月03日 14時33分40秒

一昨日から食あたりで死んだように倒れていました。
塗炭の苦しみというのはああいうのを言うんでしょうか。。。


さてさて、例によってレイノルズの本の続きですが、私が持っている本には実は1つの特徴があります。
それは1冊の中に2つの版が混在していて、図版によって重複があることです。それもずっと以前の持ち主がこれを入手した1877年から、そうなっているらしいのです。

掲出したのは天の川が中心を流れる天球図。(これを適当な楕円形の窓で覆うと星座早見盤になります。)

図は基本的に同じですが、表題も彩色も細部ではいろいろ違いがあります。
どちらがいいかは好みの問題ですが、1枚目の方が印刷がつぶれていないので、たぶん初期の版ではないかと思います。

Beautiful Books on Astronomy … レイノルズ『天文学および地理学図集』⑤2006年12月03日 14時37分15秒

天球図の2枚目です。
彩色の仕方が、1枚目とは大分違います。

Beautiful Books on Astronomy … レイノルズ『天文学および地理学図集』⑥2006年12月05日 23時43分15秒

さて、この奇怪な図版がお分かりでしょうか。

表題には 「COMETS AND AEROLITES 彗星と隕石」 とあります。

中央は彗星軌道の説明図で、その周囲に浮かぶ奇妙な物体は、過去に観測された彗星図。中にはプランクトンや一反木綿のようなものもあります。下の方に飛んでいる妖怪じみた連中は、一応 「古人の筆になるもの」 と断り書きがしてありますが、 「恐らくはイマジネーションの産物であろう…」 と疑ってかかっている気配は微塵もありません。

説明書きを読むと 「彗星は軽い気体状の物体である。通常ぼんやりと輝く雲のような光の集合体である“頭”と、そこから発する“尾”と呼ばれる長い光の流れからできている」 とあり、彗星の正体自体まだ謎…それこそ妖怪じみていた時代であったことを、改めて知ります。

両脇下に小さく描かれているのは 「Shower of Aerolites 隕石雨」。今なら 「流星雨」 と呼ぶところですが、隕石と流星もまだ混同されています(その区別が明快になったのは20世紀もだいぶ後のことですが)。

それにしても奇っ怪な彗星たちよ…。

Beautiful Books on Astronomy … レイノルズ『天文学および地理学図集』⑦2006年12月06日 23時54分59秒

タイトルは「望遠鏡で見た月の姿」。非常にポピュラーな画題ですが、試しに順光と逆光で見てみました。

写真だけでは差が分かりにくいのですが、順光で見ればただの平板な「絵」だったものが、背後から光を当てると途端に生気を帯び、立体的な月に見えてくるから不思議です。

暗闇にボーと光る細工絵は、まるで夏祭りの灯籠のようにも見えます。

Beautiful Books on Astronomy … レイノルズ『天文学および地理学図集』⑧2006年12月06日 23時57分27秒

順光で見た素顔。ごく普通の月面図。

Beautiful Books on Astronomy … レイノルズ『天文学および地理学図集』⑨2006年12月07日 08時33分29秒

「惑星の大きさ比べ」と題した図。

これも透過光で見た美しさを狙って撮ってみたんですが(2枚目の写真)、腕が悪いせいで、どうも難しいですね。

さて、図版をよく見ると星が左右に9個並んでいますが、右端は冥王星ではなく地球の月です。

惑星はまだ海王星(1846年発見)までしか見つかってない頃の絵。…と書いていて、「ああ、そうだ今も惑星は海王星までだった」とふと気づきました。

海王星は人類が発見した最後の惑星なのですね。

Beautiful Books on Astronomy … レイノルズ『天文学および地理学図集』⑩2006年12月07日 08時36分05秒

同じ図版を逆光で見たところ。色味が今ひとつ出ていない感じ。

ちなみに1枚目の写真に見えていた、各惑星の脇に描かれた衛星たちは、穿孔されていないので、ここでは惑星本体だけが光っています。

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ところで、今日から出張で留守にしますので、明日はブログもお休みです。
帰りは日曜日の予定です。

望遠鏡の誘惑2006年12月10日 21時00分19秒

★『ぼくはいつも星空を眺めていた― 裏庭の天体観測所』
 チャールズ・レアード・カリア (著), 北澤 和彦 (翻訳)
 ソフトバンククリエイティブ刊

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小雪の舞う仙台から帰ってきました。

写真は往復の新幹線の中で読んだ本。今年の2月に購入したまま放ってあったのを、この機会にと思って持参したのですが、もう貪るように一気に読みました。

とてつもなく毒気を放つ本ですね。要は元・天文少年の天文熱復活の体験談なのですが、身に覚えのある人には堪らない内容でしょう。1976年の時点で天文知識がフリーズしていた中年男性が、21世紀の今天文に目覚めるとどういう事態が生じるのか。痛切なまでにリアルな描写です。

結局、著者はスライディング・ルーフ付きの観測小屋を裏庭に建てることを決意し、1年がかりで実現するのですが、その苦労を縦糸に、少年時代の思い出(特に占星術を業としていた、神秘主義的な母親の思い出)や、最新の天文事情などを織り交ぜて、しみじみ楽しい読み物となっています。

私も数年前にそういう「回心」を経験し、結局自分の性格(根気が無い)ではリアルな天文趣味は無理…と見切りをつけて、イメージの世界に遊ぶ方向、すなわちクラシカルな天文趣味に耽溺する方向に転じて現在にいたっているわけですが、しかし、この本を読んでまたぞろ「虫」が動くのを感じました。

で、今日は性懲りも無く地人書館の『2007年版望遠鏡・双眼鏡カタログ』などを買い込んで、いろいろ妄想にふけっています。非常に危険な徴候です。しかも悪いことに、最新の「天文ガイド」誌の特集が「ベランダ天文台」だったりして、私の心を揺さぶるのです。