天文台の主になりました2006年12月11日 22時36分04秒


天文熱が復活し、私もとうとう憧れの天文台オーナーになりました。
高さは12cmしかありませんが…。

高台に立つ石造りの小屋と、そこに付属する古風な天文ドーム。

David Winter(1958~)という、日本でいえばフィギュア作家の作品。ただし、材質は石膏なのでずっしりと重いです。1997年に発売されたもの。

ドームは完全にフィクショナルな造りで、他愛ないといえば他愛ない細工物ですが、意外に?こういうチマチマしたものが好きなので、本棚にちょこんと飾って飽かずに眺めています。

わが家の私設天文台、その22006年12月12日 00時09分20秒


日付も変わったので、アリバイ的にもう1本投稿します。

昨日、「フィクショナルな造り」と書いたわけは、上の写真をご覧下さい。
妙なドームの開口部と、そこからヌッと突き出た望遠鏡の筒先。

いずれも現実にはありえない構造ですが、しかし、いかにも浮世離れした天文家がちょこんと顔を出しそうな雰囲気があります。(そして彼は豆粒ほどの顔を紅潮させて、「彗星だ!彗星だ!」とキーキー甲高い声で叫ぶに違いありません。)

 ★  ★  ★

師走のせいか、何とも慌しいのですが、今日からまた中国に行ってきます。今度は3泊でトンボ帰り。帰宅は金曜日の予定です。

帰国2006年12月15日 23時13分28秒


たった今中国から帰りました。
今回は先方との友好交流活動がメイン、観光もちょろっと、という内容でしたが、体調が万全ではなく、身体の芯から疲れた感じです。
今晩はゆっくり休みます。。。。

Beautiful Books on Astronomy … レイノルズ『天文学および地理学図集』⑪2006年12月16日 13時46分41秒

「気象学図解―さまざまな大気現象(Diagram of meteorology: Displaying the various phenomena of the atomosphere)」と題したカラフルな図。
(スキャナーの加減か、細かい横縞が写りこんでいますが、原版はもっときれいです。)

この本の書名が『…地理学図集』となっているのは、宇宙の光景だけでなく、こうした地球上の現象も収められているからなのでしょう。

取り上げられているのはかなり雑多な内容で、雨、稲妻、霧、雲、竜巻、嵐、万年雪、蜃気楼、虹、幻日、暈(ハロ)、流星、黄道光などが1枚の絵に詰め込まれています。

気象学と言いながら、黄道光(地球軌道付近に広がる惑星間塵に太陽光が反射して見える現象)のように、純然たる天文現象が入っているのは、奇異な感じを受けますが、しかし、裏面の解説文を読むと

「この現象は、水星やときには金星の軌道をも越えて広がる、太陽を取り巻く大気の断面だとされてきたが、現在、天文学者の間でもこの件については大いに意見が分かれている」

とあって、当時は多分に謎めいた現象だったことが分かります。

うれしい便り2006年12月17日 09時02分23秒


昨日、リチャード・サンダーソンさんからメールがありました。

このブログを開設した最初の頃、「天文古玩の世界への招待」と題して、サンダーソンさんのコラムをシリーズで載せました。私は氏の文章で天文古玩の世界に開眼したので、サンダーソンさんは、いわば私の「師匠」にあたる方です。(左のカテゴリーから「古玩随想」の最初の方をご覧下さい。)

「お元気のことと思います。昔のメールを見ていて、2002年当時の私たち二人のやりとりが目に留まりました。私の書いた『天文学の形見』の日本語訳が、このテーマに関する人々の興味をかきたてるのにお役に立ったか、気にかけておりました。私はもう新聞に記事を書いてはおりませんが、最近"The Illustrated Timeline of the Universe"という本を、友人のフィル・ハリントンと共著で出しました…」

あれからもう4年も経つのか…と感慨もひとしおです。

あれこれ返事を書いた中で、「最近、掘り出し物はされましたか?すばらしいコレクションの一端でも、ブログで紹介できれば、たいへん嬉しいのですが…」とお願いしてあります。近日中に天文古玩の豊かさ・奥深さを、改めてお伝えできるかもしれません。そして、私自身も新たなパワーをもらえるといいなと思っています。

せっかくの機会なので、氏が出された本の宣伝をしておきます(私も1冊アマゾンで注文しました)。

http://www.amazon.co.jp/Illustrated-Timeline-Universe-Course-Pictures/dp/1402736053/sr=11-1/qid=1166277382/ref=sr_11_1/503-1745152-6871957

もっとも、内容は古玩とは殆んど関係ありません。“A Crash Course”と副題にあるとおり、ビッグバンから星々の誕生、そして人類が誕生して宇宙探査に乗り出すまでの「全宇宙史」を、128ページという紙数で一気呵成に描き出そうという内容です。写真とイラスト満載。(←Amazon.com のブックレビューより)

黒い本… 『全宇宙誌』2006年12月18日 06時25分01秒


『全宇宙誌』
松岡正剛他 (編集・構成)、杉浦康平 (アートディレクション)
工作舎、1979年初版 (家蔵本は1980年第3刷)

 ★   ★   ★

昨日の記事を書いていて、「ぜんうちゅうし 全宇宙史」とキーを叩いた瞬間、この本が脳裏をかすめました。

内容については出版社のサイト↓にあるとおりです。一番下の「復刊リクエスト」をクリックすると、そこにも熱いメッセージの数々が書き込まれています。
http://www.kousakusha.co.jp/BOOK/cosmo.html

「空前の“星書”」というキャッチコピーの通り、古今東西の宇宙論がみっちり詰め込まれた濃厚な本。

…といいつつ、私自身はこの本を通読していません。その内容よりも、《松岡+杉浦コンビ》による、黒々とした造本の妙に惹かれて購入したというのが実情。(そういう人は意外に多いかもしれませんね。純粋に読み物として見た場合、黒地に小さな白い活字は、目で追うのが一寸しんどいです。)

上の写真は、斉田博氏の筆になる「少年のための天文学」という章を撮りましたが、全篇この調子で、最初から最後まで本当に真っ黒です。

謎めいた暗黒を背景に、人間の「知の遺産」が白く儚げに刻まれている…そんな風にも見えます。

向かって左の小口(背表紙に対向する面)に白い模様が見えていますが、これぞ伝説のブックアート、「小口に浮かび上がるアンドロメダ星雲」の一部です。この小口絵は見る角度によって、ときにアンドロメダ星雲となり、ときに星座図となります。
(詳細はこちら  http://www.eel.co.jp/03_wear/02_selfread/Yu_2/main03.html

小口絵自体は西洋古書に伝統的な技法ですが、それを印刷で実現したところが驚き。黒ベタに白抜きの文字をきれいに出す技術と並んで、まさに20世紀の職人芸。しかし、それがこの本の復刊を困難にしている大きな理由でもあるそうです。

かわいいレンズセット2006年12月19日 22時43分01秒

★科学教材用
 ガリレオ式 天体望遠鏡/地上望遠鏡/反射望遠鏡/幻燈機/写真機
 五種組立用セット
 T.O.C.光学レンズ普及部

 □  ■  □  ■ 

たぶん、昭和20年代のものと思われる品。
当時の子ども向きのレンズセットです。
メーカーの「T.O.C.光学」は今のところ正体不明。

しかし、5センチ×6.7センチというミニサイズながら、秀逸なパッケージデザインですね。イラストも、文字も、全てが愛らしく、側面に書かれた「BOEN LENSES」の文字もいい味を出しています。

肝心の箱の中身は、明日ご紹介します。

かわいいレンズセット…その22006年12月20日 20時06分17秒

(昨日の続き)

箱を開けると、茶色く変色した説明書に包まれて、凸レンズ2枚、凹レンズ1枚、鏡2枚、すりガラス1枚が出てきます。

これらを組み合わせると、「天体望遠鏡」「地上望遠鏡」「反射望遠鏡」「幻燈機」「写真機」が作れるという触れ込みですが、説明書を読むと「反射望遠鏡」というのは、いわゆる潜望鏡のことですし、「写真機」というのも、外の景色をすりガラスに投影するだけのものと分かります。

サイズ表記もめちゃくちゃで、例えば鏡は「5cm×20cm」と表記されていますが、実際には3cm×4.5cmしかありません。

商品としてはいかにも怪しげですが、しかし、私はこういうチープな品が妙に好きです。

当時、大きな夢を抱いて、この商品を握り締めた少年がいたのではないでしょうか。それを思うにつけても、涙ぐましい程のいじらしさ、健気さを感じてしまいます。そこには間違いなく自己憐憫の要素もあると思いますが…。

解説は、粗略な図と、下のような至極簡単な説明文(かなりいい加減)から成ります。

■天体望遠鏡■

1号レンズと2号レンズにて図面の如き天体望遠鏡を作りませう 筒の長さは30cm位(二枚の凸レンズの焦点距離の和)にするのがよろしい 図面の如く目に近い方のレンズを接眼レンズと云ひ 1号レンズを用ひます 又物体に近い方のレンズを対物レンズと云ひ 2号レンズを使ひます 出来上がった望遠鏡は物が反対に見えますから 月や星を見るのに用ひます それで天体望遠鏡と云ひます

木箱の中の鉱物世界2006年12月21日 16時37分54秒


理科室の空気を強く感じさせる品に、木箱入りの岩石・鉱物標本があります。

このごろ、よくオークションで見かけるような気もしますが、あちこちで廃棄処分されてるんでしょうか? 腐るものでもないのに、もったいない…と言いながら、その恩恵を蒙っている一人です。

木蓋を開けて顔を近づけると、何となく冷たい匂いがするのも良いし、折箱に入った標本が整然と並ぶ様子や、記載ラベルの文字面にも、一種「怜悧」な趣があります。

■No.2 黄銅鉱 Chalcopyrite
 兵庫県朝来郡生野鉱山 正方晶系 硬度3.5 比重5.0…

その「サイズ」もまた重要な要素です。子供向けの標本セットのようなチマチマしたものではなく、手のひらにずしっとくる、いかにもハンマーで岩塊を打ち欠いたような量感が、「これぞ本物の石の標本だ!」という「本物感」を高めています。(でも、チマチマした物にも、また別種の魅力があるのも事実。で、その手の物も部屋にいくつか並んでいます。)

そして木蓋に麗々しく貼られた「理振法準拠品」のラベル。理振法とは何ぞや?と思いつつも、理科室好きにとっては、何か「皇室御用達」めいた響きがあります。

箱の中の鉱物世界(2)2006年12月22日 23時36分24秒


(左)堆積岩標本(15種)
(右)岩石鉱物標本(100種)

今日は「チマチマ」派の標本です。こうして較べるとまるで巨人と小人のよう。

左のせっけん箱サイズの標本は、いかにも「岩だぞ」という表情をしています。
片や右側の標本は、これらも確かに岩石には違いないんですが、受ける感じはまるで違います。指物細工の仕切りの中に、小さな標本が色とりどりに整然と並ぶ様は、繊細で愛らしく、鉱物界を一望する愉悦を与えてくれます。

しかし、稲垣足穂の感性は、こうしたチマチマした標本を受け入れ難かったようで、自伝的小説『水晶物語』の中で、主人公の少年に激しい呪詛の言葉を吐かせています。


■   □   ■

…見事な、縞瑪瑙や、葡萄状玉髄や、暗緑色の蛇紋岩や、眼を奪う単斜晶の角閃石などが、私の姉が住んでいる大都会のまんなかでも、見付かることがありました。そこには何々商会標本部とか理科材料店とか看板が出ていましたが、店の内部はいつだってひっそりして、人影が見えませんでした。

…もし頒けて貰えるものならば、穹窿の破片みたいな、金の斑点がついた璃璃色のかたまりや、奇抄な塔のようなアンチモン鉱や、どこかの山懐に在る立体派の部落を想わせる黄銅鉱や、竜宮城の雛型のような紫水晶の群団や、そのどれでもいい、自分のために虧き取ってもらいたいものだ、と私は思うのです。

しかし、申し込んだところで、店の人は大切な看板に手をつけるようなことはしないでしょう。その代りに、クロース張りの平べったい紙函を勧めることに相違ありません。その小さな、薄っぺらな函の内部は碁盤目に区切られて、おのおのの区郭に、指先くらいの、蛋白石だの、蛍石だの、雲母だの、輝石だの、緑泥岩だの、電気石だの、方鉛鉱だの、蒼鉛だの、氷洲石だの、橄欖石だの、ボーキサイトだのがはいっていました。しかしこんな代物こそ、その辺の洟たらしが持っている「見本」でないか!

〔註:「見本」は、原文ではカギかっこではなく、傍点になっています。〕

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私は「洟たらし」が嫌いではないので―というより、私自身が洟たらしなので、時々こうしてチマチマ眺めて楽しんでいます。