再びフラマリオンの 『一般天文学』 について(2)2007年02月18日 14時46分16秒


さて、「読めないのに紹介する」という無理なシリーズを続けます。

   ★    ★    ★

手元にある本は、保存状態が悪く、紙面に茶色の染み(仏 rousseur、英 fox)がたくさん出ています。安い本にはありがちな状態。

フランス文学者で、フランス古書蒐集家でもある鹿島茂氏によれば、挿絵本は挿絵が命で、染みが出たら最後価値はない、ただ19世紀後半の本は紙質のせいで、とりわけ染みが出やすく、美本はそれだけ貴重だそうです。

手元にある本は、まさに無価値の部類(その分廉価)ですが、私の場合はとりあえず雰囲気だけ味わえればよいので、これでも不足はありません。

上は 「原始時代の地球」 と題された章節より。一寸見にくいですが、首長竜や翼竜が禍々しく描かれ、キャプションには、「当時、地球は不思議な生物たちの住む土地であり、荒々しい環境の中で、いつ果てるとも知れぬ戦いが繰り広げられていた」 とあります。

同じモノクロの版画でも、一見してフランスっぽい雰囲気の絵というのが確かにあります。上の絵なども、見た瞬間、“ヴェルヌの『海底2万海里』そっくり!”と思いました。
(この本は、絵師も摺り師も複数参加していますが、主要な挿絵を描いたのはイニシャルCMという画家で、たぶん Charles Mettais という人だと思います。ちなみに『海底…』の方は、ド・ヌヴィルという人だそうなので、残念ながら別人。)

この絵に限らず、挿絵が全般に過度に文学的というか、いきなり神話や伝説上の人物が思い入れたっぷりに登場したりして、そこがフランス風なのか、あるいはフラマリオン風なのかは分かりませんが、とにかく非常に叙情的な味があります。

(この項続く)