ホグワーツの情景…魔術と科学2007年04月01日 08時44分38秒


ガリレオも、デロールも、話の途中ですが、またまた寄り道です。

昨晩、テレビで「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」の映画を、子どもと見ました。昨夜は時ならぬ春の嵐。わが家の上空には何度も稲光がして、雷鳴がとどろいたのですが、そんな中で見た、ディメンターと呼ばれる黒衣の幽鬼が画面を乱れ飛ぶ映像は、なかなか凄みがありました。

さて、ストーリーもさることながら、私がひそかに注視していたのが、作中のルーピン先生(闇の魔術に対する防衛術担当)の教室で、これまでの作品でも、ダンブルドア校長の部屋や、図書館など、あの映画のセットには、心惹かれるシーンが多々ありました。

天球儀やアーミラリースフィアをはじめとする、古風な天文機器の数々。怪しげな薬物の入ったガラス瓶が並ぶ様。髑髏や奇怪な生物の骨格。埃の積った古書の山、山、山。

ホグワーツの校内風景が理科室趣味と相通ずるのは、そもそも科学が魔術から生まれたからであり、多くの人にとっては、依然魔術めいた存在であり続けているからなのでしょう。

そんなことを思いながら見ていました。今夏公開の次作も楽しみです。

(写真はホグワーツでなく、ダブリンにあるトリニティ・カレッジの図書館です。 出典:http://membres.lycos.fr/violainepage/picsIreland.htm

お知らせ2007年04月02日 23時57分49秒

年度が替わり、職場の異動がありました。(3月中には分っていたことですが。)
今日から新しい部署での仕事です。慣れないこともあって、しばらくはオタオタしそうです。

ここしばらくは、記事が間遠になるかもしれません。

今日もちょっと飲酒したので、記事の方はお休みします。

ちょっと疲れ気味です。zzzz......

ガリレオと天文趣味…ニコルソン著 『科学と想像力』2007年04月03日 21時12分06秒

ガリレオの『星界の報告』 (1610) を画期として始まった、天文趣味の歴史。

ガリレオの直接的影響がいかに急速に、かつ広くヨーロッパ世界に及んだかは、マージョリー・ホープ・ニコルソン女史の『科学と想像力』(Science and Imagination, 1956 [第2刷1962], Cornel Univ. Press)に詳述されています。

今回ガリレオについて書くにあたって、この本をきちんと読もうと思ったのですが、なかなか時間がとれず、未だに中途半端なままです。

とりあえず同書の目次だけ挙げておくと、これはいくつかの論文集の体裁をとっており、

1.望遠鏡と想像力
2.「新しい天文学」と英国の想像力
3.ケプラー、『ソムニウム(夢)』、そしてジョン・ダン
4.ミルトンと望遠鏡
5.スイフトの『ラピュータへの旅』における科学的背景
6.顕微鏡と英国の想像力

の全6章から成ります。ティコ・ブラーエ、ケプラー、そしてガリレオといった人物によって幕を開けた「新しい天文学」が、いかに当時の文学的営為に影響を及ぼしたかを、同時代の資料によって丹念に跡付けています。

ニコルソンの著作は、日本でも高山宏氏らによって翻訳紹介されていますが、この初期の重要な著作が未訳となっているのは惜しまれます。

ハーシェル協会のことなど2007年04月04日 21時57分11秒

(↑ウィリアム・ハーシェルによる銀河系のモデル)

今日は日本ハーシェル協会のHP更新を少しだけして眠りにつきます。

そういえば、以前「現在入会無料!」と協会の宣伝に努めましたが、事務局の方針で今年度も会費は3,000円で据え置きと決まりました。訂正の上、あらためてご入会をお待ちしております。

★日本ハーシェル協会 http://www.ne.jp/asahi/mononoke/ttnd/herschel/

ランカスター天文台2007年04月05日 21時38分37秒


"Telescope in Lancaster Observatory" という説明書きが下の方に見えます。

廃絶した小天文台の歴史というのは調べにくいものの1つで、この天文台も、ネットではなかなかヒットしません。

そこで、1902年にスミソニアン研究所(米)が出した List of Observatories という小冊子に当ると、ランカスターという地名はイギリスにもアメリカにもあって、どちらにも天文台が存在したことが判ります。

この絵葉書は1900年代初頭にイギリスで作られたものなので、写真はおそらくイギリスのランカスター天文台の内部でしょう。

上の冊子によれば、アメリカの方はカレッジの中にあって、恒星の位置測定と教育用施設を兼ね、イギリスの方は純然たる教育施設だったと注記されていますので、この機材のスペック(口径15センチぐらいに見えます)から言っても、後者の方がよりふさわしく思えます。

質実剛健を旨とする、素朴な感じの望遠鏡。
完全にセピアに変色した画面が、時代を感じさせます。

ランカスター天文台(2)2007年04月07日 06時59分00秒


昨日はキーボードを前にしても、こっくりこっくりするほど眠かったです。
不慣れな職場での疲労と緊張が少したまっているようです。

△   ▲   △

さて、手元にもう1枚、一昨日のとどうやら同じ場所を写したらしい絵葉書があります。こちらは、"The Observatory, Lancaster Park” と書かれており、1905年・ランカスターの消印が押されています。

で、改めて調べてみると、ランカスターには「ウィリアムソン公園」という大きな公園があって、たぶんここかな?と思います。

リノリウムの販売で財を成した、ジェームズ・ウィリアムソン・ジュニア(1842-1930)が、父親のジェームズ・シニアと共に、親子2代で作り上げた公園で、開園の年次は不明ですが、世紀の初めには既に公園として整備されていたようです。

現在、園内には天文台こそないものの、蝶の飼育舎やミニ動物園など、教育関連施設はなかなか充実しています。絵葉書に見えるこんもりした起伏も、現在の写真とよく似ています。

この天文台は、「市民のための天文台」という、イギリスでは比較的新しいタイプの施設だったのでしょう。(他方アメリカでは、既に19世紀前半から、そうした天文台が存在しました。)

世紀の初め、エドワード時代の科学好きの男女が寄り集まって、望遠鏡を覗き込んでいる様が想像されます。

■参考■

★ウィリアムソン公園 http://www.williamsonpark.com/
★ジェームズ・ウィリアムソンについて 
http://www.answers.com/topic/james-williamson-1st-baron-ashton

アインシュタイン塔 Einsteinturm2007年04月08日 06時53分05秒

一見してギョッとする建物。

天文熱に浮かされたムーミン一家でも住んでいそうな塔ですが、居住用ではなく、純然たる研究施設です。

ポツダムにある、アインシュタイン塔(1924年竣工)。
ドイツ表現主義建築の代表作と目され、ウィキペディアでも項目立てされている有名な建物だそうです。むー…それにしても面妖な。

★ウィキペディア 「アインシュタイン塔」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3%E5%A1%94

太陽の重力作用によるスペクトル長の変化を探り、一般相対性理論の正しさを実証しようという目的で建てられた…というのは、分ったような分らないような話ですが、とにかくいろいろな意味で、20世紀前半の文化を体現する存在です。

(写真は1920~30年頃に流行した、白枠つきの絵葉書。ベルリン製)

ありがとう、デロール2007年04月09日 05時05分08秒


「届かない!足りない!汚い!」と、デロールの商売にいろいろ文句をつけましたが、昨日、何の前触れもなしに、不着だったポスターが再度送られてきました。

まあ、考えてみれば当然の処置で、感激する謂われはないんですが、あきらめていただけにとても嬉しいです。ここは素直に謝意を表したいと思います。ありがとう、デロール。

今回届いたのは、顕微鏡下の原生生物を描いた古風な博物画で、題して 「一滴の水」。デロールの図版としては小ぶりな方で、高さは約57センチです。

優しい色使いがいいですね。図版は網点印刷ではなく、リトグラフです。いったいいつの時代から抱えている在庫品なんでしょうか。やはり、デロールは侮れません。(…と態度をころっと変えるのも浮薄な話ですが。)

ごく薄手の紙に刷られているので、鑑賞するには、裏打ちするか、額装するかしないといけなさそうです。

 ※   ※   ※

お知らせ: 今週いっぱい能登に出張します。その間、ブログはお休みです。

帰還しました2007年04月14日 20時23分14秒

能登から戻りました。
今回は能登半島地震の被災地支援という責務を帯びての出張で、いろいろ学ぶことの多い1週間でした。

事柄の性質上、天文とは縁の薄い時間を過ごしたのですが、宿舎の風呂場から見上げた、やけにくっきりとした日本海上の北斗七星、そして穴水ゆかりのパーシバル・ローエルの名が、若干天文気分を誘いました。

本来の記事は明日から再開します。

胴乱2007年04月15日 08時25分52秒


デロールで話を続けます。

実は、デロールから最初に届いたのが、この品でした。植物採集用の胴乱(どうらん)です。野外で採集した植物を一時的に入れておくための金属缶。

長さは40センチほどで、肩に掛けるように紐がついています。深緑の色合いと、アウトドアっぽい丈夫な肩紐が、いかにもナチュラリスト御用達という感じで、いろいろ空想を誘います。

つばの広い帽子をかぶって、こんな物を肩から掛けて初夏の野山に出かけたら、さぞ爽やかな気分になるでしょうね。植物採集というと、昆虫採集以上におっとりした、至極上品なイメージが個人的にはあります。

小学生のとき、近所の草をせっせと押し葉にして、得意げにラベルをつけていたことも懐かしい思い出です。(チカラシバとか、ニワホコリとか、そのとき覚えた雑草の名前は、今でも不思議と覚えています。)