植物標本の魅力2007年04月16日 05時53分57秒

(↑小学館『採集と標本の図鑑』、昭和45年・改訂第20版、表紙より)

季節も良くなってきたので、天文を離れ、しばし植物の話を続けます。

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植物標本というのは実にはかなげなものですね。軽くて、薄くて、大層もろいです。鉱物標本も、だんだん深みにはまっていくと、湿度や紫外線に気を使ったりして、なかなか管理が大変だと聞きますが、それにしても押し葉の弱々しさとは比較になりません。

植物というのは、清楚で、控えめで、愛らしく、文字通り華がある。19世紀の女性たちが植物採集に熱中したのも、それが当時の女性の徳目に大いにかなうものだったからでしょう。

「植物的」という形容詞がありますが、植物標本はまさに「植物的」なところが魅力だと思います。解剖学アイテムなど、濃厚な刺激に飽いた心には、まさに一服の清涼剤。言うなれば、理科室趣味におけるベジタリアン感覚といったところでしょうか。

とはいえ、植物学はリンネ直系の伝統と格式を誇る学問。その見かけとは裏腹に、重々しい学問の蘊奥をチラリと感じさせるのも、また素敵な点です。