ドレイパーもの…月のステレオ写真 ― 2007年05月01日 22時09分09秒

ドレイパーものの最後は、月のステレオ写真です(台紙サイズ 17.8 x 9 cm)。
天体写真の中でも、月は最も古くから被写体になっており、ドレイパー自身、早くも1840年には月の銀板写真撮影に成功しています。ただし、掲載したステレオ写真(およびそのオリジナル)は、19世紀も後半のものでしょう。
すっかりセピア色になった満月。
「月やあらぬ…」の古歌をふと思い浮かべたりします。
なお、文字情報は下記の通り。
●写真下部
FULL MOON.
From negative taken by Prof. H. Draper, with his silvered glass telescope.
Published by C. Bierstadt, Niagra Falls, N.Y.
●右側欄外
Sold only by Underwood & Underwood,
Liverpool, - New York, - Chicago, - Tronto, - Ottawa, Kas, - ElPaso, Tex.
ところで、この左右の写真は確かに違って見えますが、これは本当のステレオ写真なのでしょうか?どうも、月の秤動、いわゆる首振りを利用して別々に撮った写真を組み合わせただけ、という気もします。
実際に立体視したらどんな風に見えるのか気になりますが、左右の写真間隔が広くて、肉眼ではどうしても1つに融合しません。
■付記■
今思いついて、画面上で縮小表示して試したら、画像は荒くなりますが、見事に球形に見えました。実に不思議な映像。
天体写真の中でも、月は最も古くから被写体になっており、ドレイパー自身、早くも1840年には月の銀板写真撮影に成功しています。ただし、掲載したステレオ写真(およびそのオリジナル)は、19世紀も後半のものでしょう。
すっかりセピア色になった満月。
「月やあらぬ…」の古歌をふと思い浮かべたりします。
なお、文字情報は下記の通り。
●写真下部
FULL MOON.
From negative taken by Prof. H. Draper, with his silvered glass telescope.
Published by C. Bierstadt, Niagra Falls, N.Y.
●右側欄外
Sold only by Underwood & Underwood,
Liverpool, - New York, - Chicago, - Tronto, - Ottawa, Kas, - ElPaso, Tex.
ところで、この左右の写真は確かに違って見えますが、これは本当のステレオ写真なのでしょうか?どうも、月の秤動、いわゆる首振りを利用して別々に撮った写真を組み合わせただけ、という気もします。
実際に立体視したらどんな風に見えるのか気になりますが、左右の写真間隔が広くて、肉眼ではどうしても1つに融合しません。
■付記■
今思いついて、画面上で縮小表示して試したら、画像は荒くなりますが、見事に球形に見えました。実に不思議な映像。
続・月のステレオ写真 ― 2007年05月02日 21時07分23秒

トコさんから昨日の記事にコメントを頂いて、大いに納得です。ありがとうございました。
ちょっと勘違いしていたんですが、ステレオ写真を撮る場合、2枚のレンズの距離を人間の両眼の間隔に合わせる必要はなかったんですね。すなわち距離を縮めれば小人の視覚、距離をあければ巨人の視覚というわけです。大人と子どもで世界の見え方が違うのは、目線の高さばかりでなく、両眼距離の影響もあった、ということを新たに発見。
対象までの距離が両目の間隔の30倍というと、人間のプロポーションでいえば大体2メートル弱で、そのあたりから眺めたときが、一番ヴィヴィッドに立体感を味わえるという、これはたぶん経験則なのでしょう。
計算してみると、これはちょうど2度の視角を張る距離になりますが、件のステレオ写真もそれぐらい角度が振れているように見えます。あれは明らかに狙った写真ですね。昨日の記事では、「月の秤動、いわゆる首振りを利用して別々に撮った写真を組み合わせただけ…」と、ネガティブな書き方をしたのですが、月を立体視するために秤動を利用したというのが素晴らしいアイデアで、むしろそこに感服するべきでした。
で、あの写真は身長34万キロメートルになんなんとする巨人の視覚というわけで、何とも悠然たる話です。
今日の写真は既出(http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/07/26/461725)ですが、キーストーン社の製品。こちらはアメリカのヤーキース天文台の写真が元になっています。たぶん20世紀前半の品。
折りしも今宵は満月…●
ちょっと勘違いしていたんですが、ステレオ写真を撮る場合、2枚のレンズの距離を人間の両眼の間隔に合わせる必要はなかったんですね。すなわち距離を縮めれば小人の視覚、距離をあければ巨人の視覚というわけです。大人と子どもで世界の見え方が違うのは、目線の高さばかりでなく、両眼距離の影響もあった、ということを新たに発見。
対象までの距離が両目の間隔の30倍というと、人間のプロポーションでいえば大体2メートル弱で、そのあたりから眺めたときが、一番ヴィヴィッドに立体感を味わえるという、これはたぶん経験則なのでしょう。
計算してみると、これはちょうど2度の視角を張る距離になりますが、件のステレオ写真もそれぐらい角度が振れているように見えます。あれは明らかに狙った写真ですね。昨日の記事では、「月の秤動、いわゆる首振りを利用して別々に撮った写真を組み合わせただけ…」と、ネガティブな書き方をしたのですが、月を立体視するために秤動を利用したというのが素晴らしいアイデアで、むしろそこに感服するべきでした。
で、あの写真は身長34万キロメートルになんなんとする巨人の視覚というわけで、何とも悠然たる話です。
今日の写真は既出(http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/07/26/461725)ですが、キーストーン社の製品。こちらはアメリカのヤーキース天文台の写真が元になっています。たぶん20世紀前半の品。
折りしも今宵は満月…●
『立体で見る [ 星の本 ] 』 ― 2007年05月03日 20時17分12秒

↑外箱(左)と本の中身
さて、昨日の記事を書いたあとで、「むぅ、もっともっと巨人化したら、星の遠近感も見えてくるのでは…」と思った瞬間、「あ、そういえば…」と思い出したのが、この本。
★立体で見る [ 星の本 ]
杉浦康平 + 北村正和、福音館書店、1986
(手元にあるのは1994年の第24刷)
薄紫の紙に、赤と青で星が印刷されていて、赤青のセロハン眼鏡で覗くと、星座が見事に浮き上がって見える仕組み。
載っているのは、「5等星までの全天の星と球状星団、銀河系外星雲、やく2600個」で、それを 50光年以下、51~100光年、101~200光年、201~500光年、501~1,000光年、1001光年以上 の6段階に分けてプロットしてあります。
文句なしにいい本ですね。初版以来20年、いまだに版を重ねているのは素晴らしい。この本は児童書に分類されていますが、鬼才(奇才)・杉浦康平氏がその真骨頂を発揮した快作だと思います。
もちろん、この本は単なる思いつきだけで出来たわけではなく、地道な計算と、気の遠くなるような作図と製版作業を経て、最初のプロトタイプの出現(1973)から最終的な完成まで、実に13年間を要した…と解説文にはあります。
なお、この星座図は最初、あの『全宇宙誌』(1979)(※)に掲載される予定だったとのこと。
(※)http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/12/18/1035404
さて、昨日の記事を書いたあとで、「むぅ、もっともっと巨人化したら、星の遠近感も見えてくるのでは…」と思った瞬間、「あ、そういえば…」と思い出したのが、この本。
★立体で見る [ 星の本 ]
杉浦康平 + 北村正和、福音館書店、1986
(手元にあるのは1994年の第24刷)
薄紫の紙に、赤と青で星が印刷されていて、赤青のセロハン眼鏡で覗くと、星座が見事に浮き上がって見える仕組み。
載っているのは、「5等星までの全天の星と球状星団、銀河系外星雲、やく2600個」で、それを 50光年以下、51~100光年、101~200光年、201~500光年、501~1,000光年、1001光年以上 の6段階に分けてプロットしてあります。
文句なしにいい本ですね。初版以来20年、いまだに版を重ねているのは素晴らしい。この本は児童書に分類されていますが、鬼才(奇才)・杉浦康平氏がその真骨頂を発揮した快作だと思います。
もちろん、この本は単なる思いつきだけで出来たわけではなく、地道な計算と、気の遠くなるような作図と製版作業を経て、最初のプロトタイプの出現(1973)から最終的な完成まで、実に13年間を要した…と解説文にはあります。
なお、この星座図は最初、あの『全宇宙誌』(1979)(※)に掲載される予定だったとのこと。
(※)http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/12/18/1035404
GWなれども ― 2007年05月04日 05時45分27秒
ゴールデンウィークも、はや終盤ですね。
私はといえば、特に遠出をする予定もないのですが、またぞろ、いろいろ仕事がたまっているので、週末はそちらに専心します。
ブログはその間お休みです。
皆さん良いGWを!
私はといえば、特に遠出をする予定もないのですが、またぞろ、いろいろ仕事がたまっているので、週末はそちらに専心します。
ブログはその間お休みです。
皆さん良いGWを!
プロイセンゴールドのシガレットカード…ベルリン天文台 ― 2007年05月08日 07時29分17秒

さて、連休明けのスタートは、思い出したように、またプロイセンゴールドのシガレットカード(※)の登場です。今回は望遠鏡シリーズ。
(※)http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/10/24/573704
キャプションは、「新バベルスベルグ天文台のツァイス屈折望遠鏡」。
「新…」というのは、即ちベルリン天文台のことで、観測適地を求めてベルリン市中から郊外のバベルスベルグに移転(1911年)した、新しい建物を指します。
このカードのモチーフは、1915年に設置されたツァイス製65センチ望遠鏡。
ドームに穿った円形小窓がかわいらしい。素朴な版画の味わいも素敵です。
★参考: http://www.aip.de/institute/history.html
プロイセンゴールドのシガレットカード…ヤーキス天文台 ― 2007年05月09日 06時11分55秒

描かれているのは、シカゴ近郊のヤーキス天文台に鎮座する、有名な101cm屈折望遠鏡(1897完成)。
昨日のカードと大差ない構図ですが、ここではキャプションに注目。
「アメリカのある天文台の内部」
おや?固有名詞ゼロ…。いぶかしく思いながら、裏面の解説文を読むと、ここにも「対物レンズと接眼レンズからなるタイプを屈折望遠鏡と呼ぶ云々」、といったことが書かれているだけで、この望遠鏡がいったいどこの代物か、さっぱり分かりません。
史上最大の屈折望遠鏡も形無し。ドイツ人は身びいきの要素が強いのか?
ちなみに、このカードが発行された1933年には、ヒトラーが首相に就任し(翌年「総統」)、ドイツはナチス一色に染まっていきますが、そんな時代背景もチラと頭をかすめます。うがちすぎかもしれませんが…。
プロイセンゴールドのシガレットカード…フランス某天文台 ― 2007年05月10日 06時43分58秒

「フランスのある天文台の写真撮影用屈折望遠鏡」
と、キャプションにあります。
いったいどこの望遠鏡なのか? 説明を見てもさっぱり分りません。(ブログ主にはいまだに分りません。ご教示いただければ幸いです。)
昨日のカードに続き、ここでも他国への冷淡さが感じられます。
3連(?)式鏡筒に、写真撮影装置、光電測光装置を備えた、非常にモダンな機材。造型感覚ひとつとっても、完全に19世紀と決別した、いかにも20世紀の風情。いわばメカニクスからエレクトロニクスへ…そんな時代の変化を感じます。
前にも書いたように、このカードシリーズは全部で110枚からなり、今日のカードが110番の大トリです。最新鋭の機材を持ってきたのは、多分そのせいでしょう。
戦前の理科実験 ― 2007年05月11日 23時55分19秒

最近の買い物から。
また戦前の理科室絵葉書を入手しました。
ちょっとゴチャゴチャして見にくいのですが、理科室は今、実験の真っ最中。坊主頭の男の子たちが、真剣な顔つきでフラスコに液体を流し込んでいます。ちょび髭を生やした先生が、教壇の上から、いかめしい態度でそれを見下ろしています。
黒板の文字からすると、食塩に濃硫酸を注いで、塩酸ガスの発生を観察している場面のようです。ちょっと危険を伴う実験なので、教室の空気もかなり張り詰めています。オリジナルの絵葉書だと、一人ひとりの表情もよく分って、その場の空気がリアルに感じられます。
右下のキャプションには「大連尋常高等小学校 理科実験」とあって、これは外地の小学校の絵葉書。ちょっとおさらいすると、大連は中国東北部の都市で、日露戦争後にロシアから租借権を割譲され、太平洋戦争終結まで日本が統治していました。
少年たちの中には、かすりの着物姿もチラホラ見えて時代を感じます。たぶん大正中期~昭和初年ぐらいの校内風景でしょう。
また戦前の理科室絵葉書を入手しました。
ちょっとゴチャゴチャして見にくいのですが、理科室は今、実験の真っ最中。坊主頭の男の子たちが、真剣な顔つきでフラスコに液体を流し込んでいます。ちょび髭を生やした先生が、教壇の上から、いかめしい態度でそれを見下ろしています。
黒板の文字からすると、食塩に濃硫酸を注いで、塩酸ガスの発生を観察している場面のようです。ちょっと危険を伴う実験なので、教室の空気もかなり張り詰めています。オリジナルの絵葉書だと、一人ひとりの表情もよく分って、その場の空気がリアルに感じられます。
右下のキャプションには「大連尋常高等小学校 理科実験」とあって、これは外地の小学校の絵葉書。ちょっとおさらいすると、大連は中国東北部の都市で、日露戦争後にロシアから租借権を割譲され、太平洋戦争終結まで日本が統治していました。
少年たちの中には、かすりの着物姿もチラホラ見えて時代を感じます。たぶん大正中期~昭和初年ぐらいの校内風景でしょう。
光害談義 ― 2007年05月12日 07時17分49秒

真夏日かと思うと、急に冷え込んだり、妙な天気です。そのせいか、昨日はこの時季にしては空がくっきりとして、星の光も強く感じられました。
☆ ☆ ☆
さて、今日は「古玩」とは関係ありませんが、天文趣味に関連して「光害」の話題です。
「光害談義」と称して、6年前に書いた文章がネット上で野ざらしになっているので、ここからリンクを張っておきます。(盲腸ページなので、見る人も殆んどなく、朽ちかけています。)
★光害談義★ http://www.ne.jp/asahi/mononoke/ttnd/lightpollution/
久しぶりに読み直して、我ながらいいことを書いてるなあ…と、思える部分もあり、また文中、自分を「観望家」と見なしているのが、ちょっと懐かしい気分を誘います。
当時は天文趣味が自分の中で復活してきた頃で、チープな機材でベランダ観望にいそしんでいましたが、当然のことながら星雲などはあまりよく見えず、その無念さが凝縮したのが、この一文なのです。
光害を視知覚の面から論じた人は、たぶん他にもいると思いますが、私にとってはオリジナルな発想であり、それなりに思い入れのある内容です。
☆ ☆ ☆
さて、今日は「古玩」とは関係ありませんが、天文趣味に関連して「光害」の話題です。
「光害談義」と称して、6年前に書いた文章がネット上で野ざらしになっているので、ここからリンクを張っておきます。(盲腸ページなので、見る人も殆んどなく、朽ちかけています。)
★光害談義★ http://www.ne.jp/asahi/mononoke/ttnd/lightpollution/
久しぶりに読み直して、我ながらいいことを書いてるなあ…と、思える部分もあり、また文中、自分を「観望家」と見なしているのが、ちょっと懐かしい気分を誘います。
当時は天文趣味が自分の中で復活してきた頃で、チープな機材でベランダ観望にいそしんでいましたが、当然のことながら星雲などはあまりよく見えず、その無念さが凝縮したのが、この一文なのです。
光害を視知覚の面から論じた人は、たぶん他にもいると思いますが、私にとってはオリジナルな発想であり、それなりに思い入れのある内容です。
木彫りの小鳥 ― 2007年05月13日 22時30分41秒

風かおる5月。世間は、愛鳥週間の真っ只中です(5月10日~17日)。
写真は、昔ドイツ土産にもらった、木彫りの小鳥。全長は7cmほど。
色といい、形といい、とても可愛らしい品ですが、これは立派な実用品だそうです。
くれた人の話によると、これを野鳥の給餌台に取り付けておくと、小鳥の警戒心が薄れて、鳥たちが集まりやすくなるのだとか。足のところはコイル状になっていて、どこにでも取付けやすくなっています。
実際に試したことはないので、効果の程は不明。
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