理科室風書斎のコンセプト・デザイン(3) ― 2007年06月10日 06時50分04秒

昨日の記事は、要するに「理科室風書斎」の「理科室」の部分は、50~60年代ないしそれ以前のアイテムで統一したいけれども、必ずしも小学校のレベルには拘泥しないよ、というアバウトな案を描いたのでした。
で、それを「書斎」にくっつけるにあたって、そちらの方のイメージもなぞっておきます。
理科室と図書室は、「校内二大好きな場所」だったので、私の書斎イメージの原型は図書室にあります。書棚の整理に無頓着な人もいるようですが、私は今でも分野別に本が並んでいるのが好きで、それはきっと図書室の影響でしょう。
ただ、「書斎」というからには、図書室のように「きちんとした、お行儀の良い」イメージばかりではなく、そこに何か怪しげな雰囲気も欲しいのです。パブリック・ライブラリーと、プライベート・ライブラリーとの違いと言いましょうか、書斎の方はあくまでも「閉ざされた空間」であって、何か秘密を蔵していてほしい。
そのためには重厚な味つけが必要―というわけで、書斎のイメージは、小学校の図書室よりは、もう少しビクトリアンな方向に振れています。(まあ、そこに小学校の理科室をくっつければ、必然的に「怪しげな雰囲気」になるわけです。)
最近でも、雑誌の書斎特集を見ると、「作家の仕事場訪問」と称して、スチール書棚にイミダスや、会社四季報や、本屋で平積みになっている類の小説などが雑然と並んでいる写真に、「これぞ男の空間」みたいな記事がくっついていたりしますが、まことに寒心に堪えません。質実剛健も結構だが、もう少し「身なり」に気を使ってほしい、と思うこと切です(これは当の作家に文句をつけているわけではなく、記事の作り手の意識を問題にしています)。
「それなら、お前の書斎を見せてみろ」という流れになりますが、実態はやっぱり質実剛健派なので(でも会社四季報はありません)、すべては今後の課題です。
しつこいようですが、最後にまた『ビクトリア時代のアマチュア天文家』から、私のお気に入りの一節を引用して、理科室風書斎のイメージを補強しておきます。
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1971年夏のある日の午後、私は当時すでに相当の年輩だった元銀行支配人 Alan Sanderson と対面して、そのもてなしを受ける栄に浴した。当時を思い起こすと、本書で論じたようなグランドないしマニアックなアマチュア天文家の伝統に、彼はぴたりとはまり込んでいたことが理解できる。
リバプールのハンツクロス(Hunt's Cross)にあった彼の広壮なビクトリア様式の家は、まさにコレクションでいっぱいのアラジンの洞窟だった。書棚の詰まった部屋、真鍮製の顕微鏡、ジョージ王時代の反射望遠鏡、からくり仕掛け、古代の遺物、それに目を見張るようなバセット=ロウク社製鉄道模型など。
彼は熟練の顕微鏡観察者だった。彼はリバプール近くの湖や池なら、どこから汲んできた壜の水でも、そこにいる微生物に基づいて言い当てることができると言っていた。また、彼は(私の知る限り)近年では個人が所有する物としては唯一の、確かにハーシェル作といえる7フィート反射望遠鏡を保有していた。(邦訳398頁)
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フィクションの世界だけではなく、こういう人は現実にいたのですね。そう、この感じ。この感じを、もう少し身の丈サイズに合わせたものが、私の目指す「理科室風書斎」なのです。
〔写真はフロイトの書斎(現フロイト博物館、ロンドン)〕
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