昔日の形見…東京天文台にて2007年11月29日 07時33分00秒


昨日の話題から「廃物の美」ということを連想したのですが、忘れないうちに1枚の写真を載せておきます。

この美しいガラス塊が何だかお分かりでしょうか?
先日、三鷹の国立天文台(旧東京天文台)に行った際、陳列されていた品です。

傍らの説明板にはこう書かれていました。

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<空襲で焼け残ったレンズ>

ここに展示するのは、口径16cmのメルツ社製屈折望遠鏡の対物レンズである。

この望遠鏡は、1878年(明治11年)に海軍水路部より搬入され、東京・麻布の赤煉瓦作りのドームに設置された。後に東京帝国大学東京天文台に移管され、大口径の第一線の天体望遠鏡として、さまざまな観測で活躍していた。

〔…〕しかしながら、1945年(昭和20年)5月24-25日の東京大空襲で焼失したものである。竹内瑞夫が、その麻布の焼け跡に赴き、焼け残ったレンズを拾ってきたものを、冨田弘一郎が今日まで保管していたものである。

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明治に渡来し、日本の天文学の進歩を支えた歴史的望遠鏡の残影。
透き通ったガラス塊の発する輝きが、儚くも美しい。
そして、こういう物をいとおしむ心、それがまた私には一層美しく、いとおしいものに感じられるのです。