ジョバンニが見た世界…天文掛図の話(その1)2008年05月19日 21時02分11秒

( 『銀河鉄道の夜』より 第1章「午后の授業」 )

「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れた
あとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは
何かご承知ですか。」先生は、黒板に吊した大きな黒い星座の図の、
上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指しながら、みん
なに問をかけました。…

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さて、今日の記事は文字だけなんですが、かなりまなじりを決して書いています。
他でもありません。『銀河鉄道の夜』に登場する素敵な天文アイテムの数々を検証するという、「天文古玩」開始時からの念願だった巨大なテーマに、いよいよ取り組もうと思います。

物語に登場する順番に沿って、まずは星座の掛図の話題から。

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そもそも、この企画のスタートがこれほど遅れたわけは、ズバリこの星座の掛図が、大層な難問だったからです。実を言えば、今でも正体がはっきりしません。星座の掛図というのは、ありそうでない。では本当にないかと言うと、あったことは確かなんですが、近づけば逃げる逃げ水のようなもので、なかなか正体がつかめません。

大層なことを言う…と思われるかもしれませんが、この何気ない文章は、実はいろいろ問題をはらんでいます。掛図の歴史、天文学史、理科教育史、天文教具の歴史に照らして、こうした場面は現実にありえたのか?そもそも、この作品世界の時代設定はいつで、ジョバンニたちは何年生なのか…?

星座の掛図問題(問題視しているのは私だけですが)について、現在分かっていることを、これから順不同に挙げていきます。

(この記事は超長期連載になるので、ふだんの記事の合間に間欠的に書いて行こうと思います。)