棚、棚、棚。壜、壜、壜。…動物学博物館2008年05月31日 10時29分32秒

久しぶりに驚異系ブログ Curious Expeditions を覗いて例によってビックリ。
(常に期待を裏切りませんね。)
ルーマニアにある博物館の紹介記事ですが、これはまた何と…。

シチュエーションが微妙に良いのです(以下は適当訳)。

 「私たち二人がルーマニアのクルージュ・ナポカ Cluj-Napoca にいられるのは
  1日のみ。ガイドブックをあれこれ眺め回し、結局、動物学博物館 Zoological
  Museum を訪問することに決めました。ガイドブックではほとんど触れられ
  ておらず、説明も皆無。勿論、その点に好奇心をそそられたのは言うまでも
  ありません。動物学博物館はバベシュ・ボーヤイ Babes-Bolyai 大学の一部で、
  かなり分かりにくい場所にあります。二人は不規則な螺旋階段を慎重に上り、
  ただのがらんとしたホールだと分かって、また用心しながら後戻りしたり。
  やっとの思いで博物館のドアの前にたどり着いたものの、どうやら閉まって
  いるようでした。それでもめげずにドアをノックし、そろそろ諦めかけたとき、
  ルーマニア人女性が足を引きずりながらやってきて、重いドアを開けて私たち
  を中に招じ入れてくれました。…」

館内に足を踏み入れた二人が見たものは、恐るべき標本の堆積。
棚という棚、抽斗という抽斗、壜という壜に、
エビやらカニやら昆虫やら。
蛇やら鳥やら獣やら。
干されたり、ピンで留められたり、保存液に浸かったり、内臓をさらしたり、骨をさらしたりしながら、ずらずらずらずら、果てしもなく並んでいます。
まったく途方もない空間です。

ただ、館内を見て回るうちに二人はあるものに気づきます。

 「私たちはギョッとして、正直ちょっと引きました。」

あの二人をしてこう言わしめたもの。それはヒトの胎児の標本(複数)でした。

 「今では、本物のヒトの胎児が自然史博物館に並んでいたら、間違いなくバッド
  テイストと思われるでしょうが、比較解剖学の文脈に照らせば、やはりそれは
  公正で貴重な品なのです。この胎児は、この博物館そのものと同じく、歴史
  の一コマであり、人類が自然界における己の地位を探求し続けてきたことの
  証しです。どれほど不安を掻き立てようとも、それは私たちに以下の事実を思
  い起こさせます。すなわち人類のあらゆる努力と成果にもかかわらず、我々は
  依然として霊長類の仲間であり、第三のチンパンジーだと。」

おっしゃる通り。
まあ、理屈はともあれ、その手のものが苦手な方はやはり見ない方が良いでしょう…と、一応助言した上でリンクしておきます。

■Curious Expeditions <The Museum Time Forgot: A Photo Tour>
 http://curiousexpeditions.org/?p=320

上の記事本編に載せきれなかった写真は、以下のアルバムに収められています。

■Zoology Museum
 http://flickr.com/photos/curiousexpeditions/sets/72157603732448057/

コメント

_ とこ ― 2008年05月31日 22時17分06秒

ひいい。
棚、棚、棚、壜、壜、壜!
上の写真をさいしょに見たとき、このあいだの東大の博物館展示の延長かと一瞬思いましたが、そんな生易しい(?)ものでは無かったのですね。なんというか、やはり東欧の匂いがします。

そのしたの「The Concrete Castle」という記事の写真も興味津々で眺めてしまいました。
相変わらずすごいサイトですね…。

_ 玉青 ― 2008年06月01日 17時25分34秒

まさに東大も顔色なしですね。

コレクションそのものもビックリですが、こういう場所が人に知られることなく、世界の片隅にヒッソリあるという事実がまた衝撃的で、思わずひえええです。

見学者が殆んどないらしいのに、妙に小ぎれいなのは、博物館の主みたいな人がいて、長年熱心に守りをしてきたからでしょうか。…いろいろ想像がふくらみます。

_ mistletoe ― 2008年06月02日 15時27分00秒

あ~~ワタシも最近このブログ見てませんでした。
こんなスゴイ記事がアップされているとは☆
胎児の標本。そりゃビックリもしますね。
ワタシは生物たるもの皆同じ…という考えなのですが、
恐怖、倫理的にダメな方は多かろうと思います。
フランスのフラゴナールとかもスゴイですよね。。。

_ とこ ― 2008年06月02日 17時53分45秒

標本というのはメンテナンスが必要ないものなのでしょうか?有機溶媒などはどんなに密閉しても徐々に揮発しそうですし。ということをつらつら考えていると、博物館の主はほんとうにいそうな気がしてきました。

博物館の主は、毎朝窓を開けて換気をして
むき出しの剥製の埃を落とし
棚やガラス機器を丹念に拭き掃除して
たま~に訪れる見学者に対応しつつ
日暮れ前には窓を閉めて戸締りして一日を終える
…という暮らしをしているのかもしれませんね。

東欧はここ数年、旅先や雑貨などで脚光を浴びていますが、こういうコレクションや場所が世間に知られることなく存在している可能性も十分にあるわけで、それを発掘してくれるCurious Expeditionsに今後も期待できそうですね。

胎児の標本をみたときは、思わず「うぶめ!」と叫んでしまいました(笑)。玉青さんは京極夏彦の小説を読まれたことはありますか?妖怪が出てくることで有名ですが、胎児の標本が出てきたり、鳥の剥製が大好きな伯爵が出てきたりと、ところどころでこちらのサイトと趣向が似ているなあと感じている次第です。

_ 玉青 ― 2008年06月02日 20時43分46秒

>mistletoeさま

いやあ、本当にいろんな意味でたまらん人たちですね。いったい生活費はどうしているのか、そんな下世話なことが気になります。

フラゴナールも話に聞くばかりで、当分行く機会はないでしょうが、今パパッと探したら、お約束のバーチャルツアーがありました。今はとりあえず、これで我慢です。

http://musee.vet-alfort.fr/Site_GB/index3.htm

>とこさま

この博物館の主は、きっと祖父の代から仕事を引き継いでいて、今は四代目がその後について見習い中なんではないでしょうか。(←妄想全開)

京極夏彦さんの小説、そういえば読んだことないですね。基本的に、氏がデビューした前後から、私は小説と名の付くものは殆んど読まずに過ごしているので、そのせいでしょう。(でも、国書刊行会から出ている、氏が関係した妖怪関連本は持っています。)

_ S.U ― 2008年06月03日 05時33分24秒

胎児の標本もゾッとする物ですが、これはひと目見れば何ものかわかるので、
ある意味、安心できます。
 学校の理科室で、何の標本かわからないどれも暗色の少しずつ形の違う物が
同じサイズの壜に入って数本並んで置いてあったのが妙に記憶に残っています。...
こういうのも気持ち悪いですよ。
(高尚な博物館の話題を、回り持ちの怪談披露にしてしまってすみません)

_ 玉青 ― 2008年06月03日 20時32分52秒

この話題。高尚…とも言い難いような(笑)

それにしても、

>暗色の少しずつ形の違う物が同じサイズの壜に入って数本並んで

って、いったい何だったんでしょうね?いろいろ禍々しい想像が浮かんで、うなされそうな恐さがあります。

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