夢の鉱石雑貨舗へと続く幽かな道2008年10月04日 19時58分37秒

忙しがっている割には、そう大して仕事もしていません。。。
そんなダメダメな日常の中にも、ときおり美しいモノがやってきます。

以前予約していた本がヒョイと届きました。

■『鉱物アソビ(Ishi-Asobi)-暮らしの中で愛でる鉱物の愉しみ方-』
 フジイ・キョウコ 編・著
 ブルース・インターアクションズ発行(P-Vine Books)

小理屈はさておいて、鉱物の魅力(形、色彩、透明性、多様さ、質感…)を日常の中でさりげなく愛でようという、鉱物趣味の新しいタイプの入門書。最近の言葉でいうと「鉱石ほっこり本」といった趣。

著者のフジイさんは、エディター&ライターの本業の傍ら、「プライベートでは、鉱物を愛でつつ、酒と散歩、映画、古道具を愉しむ日々」と紹介されています。うむ、いいですね。

鉱物を主題にした作品も多い、美術家の小林健二さんのアトリエの紹介記事にもびっくり。とにかく全編写真がキレイです。

   ★

 第1章 鉱石雑貨舗

 その店は、ある街のどこかで、
 息をひそめるように静かに佇んでいます。
 ガラス窓からこぼれる仄白い灯りに誘われて、
 そっと扉をあければ、そこは鉱石雑貨舗。
 …

   ★

この世のどこかにある幻の店、というのは人の想像力をいたく刺激しますね。本当にこんなお店があったら…

でも、本書の第4章「鉱物に出逢う」には、そんなフィクションの世界から飛び出したような、東京・東十条にあるcafé SAYA(http://cafesaya.net/)というお店が紹介されていて、それどころでなく、実はこの本もそこから購入したのでした。何か全体が入れ子構造になっているようで、ちょっと不思議な気がします。

もっとも厳密に言うと、この本はcafé SAYAから通じているらしい、空想の街にある空想の店、「きらら舎」が扱っていて、何かますます茫洋としてくるんですが、café SAYA自体、私はネット上でしか見たことがありませんし、疑ってかかれば本当にあるのかどうかもあやふやで、全てが夢の世界のようです。

コメント

_ S.U ― 2008年10月05日 18時24分36秒

東京の店はどうなのか存じませんが、今日、私の住んでいる市の中心部にある関連店にたまたま寄ってきました。私の勝手な分類によると、もちろん博物系や骨董系の店ではなく、ファッション系でもなく、ヒーリング系の店です。

 そこには、なめらかに磨いた鉱物と、自然のままでゴツゴツした物の両方が売られていました。足穂の『水晶物語』の少年が見るとなんと思うか、と感じました。ところが、なめらかに磨いたものは小さくて安価なものがあるのに、ゴツゴツのものは、結晶の形が明瞭な水晶のような物を除くと、大きくて少し値の張る(といっても4桁ですが)ものしかありませんでした。不規則形で磨いていない小さな鉱物のカケラは、客に見せてもただの石ころにしか見えないからかもしれません。

 ところが、理科室系の標本の鉱物は、どれも小さい物だったと思います。国立科学博物館の日本間の陳列棚は大きいものの、一つ一つの標本はそんなに大きい物ではありませんでした。それでも、私はそこで『水晶物語』で引き出しを開けた少年が感じたような後ろにのけ反らんばかりの感覚を体験することができました。やはり、理科室、あるいは博物館という空間が重要なのでしょうか。学名のラベルがあることが重要なのでしょうか。

 長々と書いたあげく、これという結論はないのですが、今日感じたことを書かせていただきました。すみませんなことでしたです。

_ れいこ ― 2008年10月05日 18時29分50秒

私もこの本を昨日買いました。架空のお店は、空想をかきたてて良いですよね。写真が素敵なので、想いを馳せるのにぴったりです。
café SAYAには一度行ったことがあるのですが、実際に行った記憶さえ夢の中の出来事のような気がする、どこか不思議なお店でした。確かに雑貨のお店ではあるのですが、ルーチカ アルコーヴォなどは、機器やディスプレイに理科室の香りが感じられ、これもひとつの理科趣味の可能性だなと思いました。

_ 玉青 ― 2008年10月06日 06時52分10秒

>S.Uさま

鉱物を見るにふさわしい環境、器というのは確かにありますね。人によって違う部分もあるでしょうが、私もS.Uさんと同じく、静謐でほの暗い(でも鉱物だけはボーっと明るい)空間、重厚な棚、学名のラベル、こうしたものに強く惹かれます。たぶん理科室趣味の徒の多くがそうでしょう。あの『水晶物語』の少年もそうでしたね。

>れいこさま

cafe SAYA…夢幻的な、素敵なお店のようですね。例の本をよく読んだら、上の写真に写っている鉱物たちは、同店が提供したものだそうですから、ますます夢の鉱石雑貨舗に近い感じです。(でも、実際には賃料やら粗利何%やら確定申告やら、外からは見えぬご苦労もいろいろおありのことでしょう。この世の現実に根を張るのも大変だ。。。)

ルーチカアルコーヴォの写真は、何度も繰り返し見ました。ストーリー性を持たせたディスプレイというのが、見ていて楽しいですね。

_ mistletoe ― 2008年10月06日 19時45分24秒

ワタシ、あまのじゃくななので今系のほっこり系が
苦手なんです…が鉱物でほっこりはしたいですね!
鉱物でほっこりはマニアックでステキ☆
しかもこばけんさんのアトリエが!
夜想を買いに行くので一緒に探してきます♪

_ S.U ― 2008年10月06日 20時59分18秒

やはり、器(お店)の造りも重要なのですね! ご紹介されたような夢のような店に私も行ってみたくなりました。
  「玉磨かざれば光なし」 という格言もあるくらいですから鉱物を磨いて美しくすることは悪いことではないのですが、前述の少年の 「もしも或る石の上に、自然力乃至人工による琢磨の痕があったならば、まずその部分を削り取る必要がありました」 の心意気やよしとしたいです。

_ とこ ― 2008年10月06日 21時58分35秒

わたしもようやっと、入手いたしました。写真が実に美しいですね。

cafe SAYAは、初めて行く人は必ず道に迷ってたどり着くお店です。最寄り駅まで来たのにお店が見つからずに帰ってしまったヒトもいるそうです。そんな幻想的なお店です。(立地が悪いだけじゃん!とはつっこまない方向で…)

11月上旬には、出版記念イベントをカフェで開催するそうなので、顔を出してこようと思ってます。

_ 玉青 ― 2008年10月07日 22時25分20秒

>Mistletoeさま

考えてみると、「鉱物でほっこり」は我ながら一寸変だったかも…。やっぱり鉱物は「ひんやり」がいいかもしれません。

>S.Uさま

「玉磨かざれば光なし」。例の少年の鉱石趣味との距離感がすさまじい格言ですが、石と人との係わりについて考えるには良い材料ですね。

>とこさま

cafe SAYA、さらに謎めいた感じですね。確かに好立地と言ってよいかどうかは迷うところですが…

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