文化の日に寄せて2008年11月03日 20時07分58秒


11月。この時季の天文ネタは何かな?…と思って、2冊の本を開きました。

1冊は野尻抱影翁の『星三百六十五夜』(http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/10/16/562533)。もう1冊はチェット・レイモの『365 Starry Nights』という、縦のものを横にしただけの同名の本。

チェット・レイモは、珠玉の天文エッセイ『夜の魂』(工作舎、http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/04/02/312676)の著者として知られる宇宙物理学者。『365…』は『夜の魂』を書く3年前、1982年に出ています。ポピュラーアストロノミー関係の本としては、たぶん彼の処女作。

で、さっそく11月のページを開いてみると、レイモの方は、11月の空を彩る主役たち、エチオピア王ケフェウスと王妃カシオペヤ、そして王女アンドロメダをめぐる神話から話が始まります。カシオペヤの慢心が招いたポセイドンの怒り。そのため人身御供となったアンドロメダ。王女があわや怪物に呑み込まれそうになったとき、勇者ペルセウスが現れて…。

かたや抱影翁ですが、11月3日の文章は「明治節」と題されています。そう、文化の日は昔、明治天皇の誕生日、「明治節」として祝われていたんですね。

「まだ明治節といった時代だった。父の十何回忌かで鎌倉の寿福寺へ墓参に出かけた。」そこで、ひょんなことから、抱影は東京から遊びに来ていた、清元と踊りの師匠である、二人の若い女性と墓参りに行くことになります。

「その帰り道だった。私も肩がほごれて並んで行くうちに、踊りの師匠が何を言いだすかと思ったら、『こないだも御放送なさいましたのね。あたくし、××のおかみさんと伺ってましたら、おかみさん、お星さまって面白いものね。だって、何やら座だの、何とか座だのって、まるでお芝居のようだものって、感心してましたわ』 これには私は毒気を抜かれ、なるほどそうだったと感心して、その後で笑った。」

「かしおぺあ座」や「あんどろめだ座」の幟旗がはためいている様を想像すると、抱影翁ならずとも頬が…。それにしても、レイモも抱影も、若い美女が話題の中心なんですが、それこそ「天」と「地」ほども味わいが違いますね。

  ★

文化の日は、期待値以上に晴天が多い「特異日」だそうですが、今日はだめでした。星もお預けです。

コメント

_ S.U ― 2008年11月05日 21時37分29秒

抱影翁の「星三百六十五夜」は私の最も好きな作品のひとつです。翁もこのおかみさんも、まだ明治の香りをただよわせているようで、いいですねぇ。

_ 玉青 ― 2008年11月05日 22時39分01秒

ちょっと懐古モードになると、自分が子どものころは、「老人」といえばイコール明治生まれだったので、明治時代は感覚的にとても近いものがあります。でも、時は移りゆくんですねえ。東亜天文学会の北尾浩一さんが星の民俗探訪を熱心に続けてらっしゃいますが、そこに登場する「古老」が、昭和生まれだったりすると、頭では分かっていても、ちょっと複雑な気分になります。

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