ファーブルの昆虫写真集(2)2008年12月18日 22時00分17秒


現物が届いて、ようやく本書の成り立ちが分かりました。

この本には「原書」があります。

■Paul-Henri Fabre & Jean-Henri Fabre,
 Insectes.
 Delagrave, 1936

ただし、この日本語版は、原書の単なる翻訳ではなくて、そこに『昆虫記』からの抄訳を添え、さらに詳細な前書と後書きによって、ファーブル(父)の略伝や、『昆虫記』における息子ポールの活躍を記すという、なかなか親切な内容になっています。

ポールはファーブルの2番目の妻の子で、65歳の時に生まれていますから、イメージとしては祖父と孫のような関係ですね。この2人はよく息が合ったらしく、ポールは6,7歳の頃から老父を助けて昆虫を追い、見事な昆虫少年ぶりを発揮しました。

ポールが写真撮影を始めたのは、1906年、彼が18歳のときです。父に命じられて、ミツカドセンチコガネの観察のために写真を撮ったのが
最初。ファーブルは既に最晩年で、『昆虫記』の本文の執筆も、その翌年に終わりましたが、ポールは1915年に父が亡くなるまでの8年間に、大量の昆虫写真を撮影しました。それが即ち本書に収められた写真です。

ただし、昨日の記事に書いたような、この写真が「演出写真」であるという記載は本書にはなく、詳細な事情は不明です。

  ★

上の写真は、『昆虫記』いちばんの人気者、タマオシコガネ。
こうして大判の写真で見ると(この本は高さが30センチ以上あります)、タマオシコガネがまるでカブトムシのようですし、彼らのごちそうも匂い立つような(失礼)迫力があります。

セピアの色調が、昔読んだ『昆虫記』の思い出を、いっそう懐かしいものにしてくれます。

コメント

_ S.U ― 2008年12月18日 23時04分16秒

玉青様、こんばんは。
 どうでもいいところにこだわってすみませんが、私は、この迫力を見ると、「タマオシコガネ」というような上品な名前ではどうも承知がいかず、やはり「フンコロガシ」と呼びたいと思います。どちらが正式な和名なのでしょうか。

 ひょっとして、「フンコロガシ」が属名で、「タマオシコガネ」が種名なのでしょうか。 お食事中だった方、ごめんなさい。

_ 玉青 ― 2008年12月19日 23時09分09秒

あはは、お食事中の方には本当に申し訳ないですね。まあ、彼ら(彼女ら)も、れっきとしたお食事中なので、先方はきっと「フン、失礼しちゃうわね!」とフン慨されることでしょう。

さて、昆虫の標準和名というのはどう決まるんでしょうか。在来種はさておき、外国種については訳者次第というか、「かくあるべし」という強制力のある決め事(例えば学会での取り決めなど)はないような気がするんですが…よく分かりません。

問題の「ヒジリオオタマオシコガネ Scarabaeus sacer」は、山田吉彦訳の岩波文庫版(1942年)では「聖たまこがね」、古川晴男訳の「少年少女ファーブル昆虫記」(1970)では「ヒジリオオフンコロガシ」、奥本大三郎氏の最新訳は見てませんが、氏の随筆中ではそのまま「スカラベ・サクレ」とカナ書きされています。

ときに、日本には動物の糞を餌にする甲虫はいても、転がす種類はいない…と思ってたんですが、上記の古川訳『昆虫記』の巻末資料には、「日本の小型なマメダルマコガネが鳥のふんをころがす」という記述がありました。えらい矮小なフンコロガシだなあ…と思いつつも、ちょっとカワイイ感じもありますね。

_ S.U ― 2008年12月20日 08時15分04秒

玉青様、私が読んだのはその古川訳でした。お調べいただき、ありがとうございました。幼時体験のすりこみというものでしょうか。第1巻の冒頭から「フンコロガシ」の連続で圧倒されたのだと思います。ちなみに私が好きだったのは、「ハキリバチ」と「セミ」です。

_ 玉青 ― 2008年12月20日 20時21分12秒

古川訳、お読みになりましたか。「同志」ですね!私はセミの幼虫を一家で試食するという話が好きでした。

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