なつかしの理科室2008年12月30日 11時08分14秒


人並みに年賀状を書いたり、大掃除をしたりの年末です。
ただし、人体模型を拭いたり、剥製の埃を払ったりというのが、ちょっと「それ」っぽいかもしれません。それにしても、棚の上のミミズクの剥製はとても古いので、もう羽軸がだめになっていて、そっと触れるだけで頭の羽がハラハラと抜けてきます。「ああ、君もか…」。

   ★

さて、最近買った本。

■高井ジロル(著)
 『なつかしの理科室-今でも手に入る理科教材154』
 アスペクト、2008

何ともストレートな題名ですね。理科室趣味の徒としては、題名だけでも買わねば!という気にさせられます。

Amazonだと、中身もチラッと立ち読みできます(http://tinyurl.com/87qect)。閲覧できるのは生物教材のページだけですが、他にも化学、地学、物理の教材が順番に紹介されています。

単に理科教材を見て楽しみたい、あるいはお値段を知って「ほー」と言いたいのであれば、例えば以下のような教材会社のページから、カタログをブラウズしてもいいわけです。

■ケニス http://www.kenis.co.jp/

しかし、本書の見所は、そうした即物的な情報よりも、著者・高井氏による蘊蓄のあるような、ないようなコメントや、理科教材大手である内田洋行の企画部長への巻末インタビューなど、オマケ的な部分にこそあります。

この本の成り立ちは、冒頭の「はじめに―もう一度、あの頃の理科室に戻ってみよう」に書かれています。

「筆者は昭和42年生まれの中年男子。大学では文学部だった。
卒業後は求人誌の編集部で面白記事作りに夢中になり、その後
ライターになった。小説や語学は好きだったけど、理数系の科
目となるとからっきしダメ。カエルはもちろん、フナの解剖も
やらなかった。経歴的にも志向的にもバリバリの文系だ。

(…)本書はそんな理系コンプレックスの著者が、膨大な数の
小・中・高校用理科教材の中から、久しぶりに眺めてみて懐か
しさを感じたもの約154点をピックアップ、個人的な感想や無
駄口とともに紹介したものだ。」

こういう人は、わりと普遍的かもしれませんね。
元・理科少年ではない人が、「懐かしさ」を切り口に理科教材を振返って、そして徹底的に面白がってみた…そこに成立したのが本書です。

本来の理科室趣味とは微妙にずれた、色物的な企画ですが、年末年始、軽い読み物を求めている方にはお勧めです。ほぼ全篇カラーでこの価格はお値打ち。

コメント

_ RoyalBlue ― 2008年12月30日 22時46分33秒

玉青さま、おひさしぶりです。
久しぶりに立ち寄らせてもらったら、どこかで見たような写真。実は私もこの本を最近買いました。家族の買い物の付き合いで、暇つぶしに寄った本屋さんにあったのが目に留まり、即買いました。
内容を見てみて、内田洋行の製品ばかりなのが残念といえば残念です。私個人的には、中村理科や島津あたりのものが好きなので...。
内田洋行というとどうしても「事務機」屋さん的なイメージが強くて。

ところで、学校の教材というのはどうしてこんなに高いのかと思います。原価はいったいどれぐらいなのでしょうか(欲しいけど高くて買うことが出来ない者の僻みです)。

_ S.U ― 2008年12月31日 13時07分35秒

玉青様、「バリバリの文系の方」の「理科室の思い出」というのは面白いですね。この方は、子どものときから理系コンプレックスだったのでしょうか。私は、コチコチの理系(子どもの時は今よりさらに徹底して理系のみを追究していた)なので、そういう感覚が理解できずうらやましい気がします。「コチコチの理系」の「文系グッズの思い出」というのがあるならば追求してみたいものですが、仮にあるとしても思い出したくないような経験に結びついているものばかりだと予想され、とてもやる気が出ません。
 
 本年一年、楽しいお話をありがとうございました。
 良いお年をお迎え下さい。

_ 玉青 ― 2008年12月31日 14時09分08秒

>Royal Blueさま

あ、やっぱり買われましたか。
いかにも通好みのコメントをいただきましたが、そうですねえ、理科教材メーカーとしての歴史的厚味という点では、確かにちょっと…という点はありますね。まあ、そこが一般向けの本の限界かもしれません。

学校教材の高さは、学校という特殊な市場相手だから維持可能なのでしょう。つい殿様商売と言いたくなりますが、でも昨今の世情を見ていると、何でもかんでも市場原理を持ち込んで、コスト削減を叫ぶことの弊害もありそうですね。医療・福祉・教育といった分野とコスト意識は相性が悪そうです。

>S.Uさま

(笑)(笑)。理科(科学)は、文系人間にとっては何となく魔術の影を引きずっているので、理系グッズの人気もそんなところに理由があるのかも。他方、文系グッズは…うーん、モノとしての訴求力がちょっと弱そうですね。

グッズというよりも、図書室の本の匂いとか、国語の教科書で見た一篇の詩とか、友だちと探検した防空壕の陰惨さとか、あまり形にはならない経験が、文系の思い出の核になるかもしれませんね。

来年も旧に倍してよろしくお願いいたします。

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