天文古玩とハイカラ趣味2009年02月21日 21時37分45秒

(↑川上澄生著『新版・明治少年懐古』、栃木新聞社、1967)

『理科十二ヶ月』から脱線していきますが、この本を読んでいて気づいたことがあります。それは、私が称するところの「天文古玩趣味」の根っこは何だろうか?ということです。

それは宮沢賢治であり、稲垣足穂であり、はたまたフープ博士であったり、クシー君であったりすることは間違いありません。が、根っこというのは、えてして枝葉以上に細かく分岐しているもので、他にもいろいろな要素が絡んで、この趣味を形作っているのだと思います。

で、今日気づいたのは、天文古玩趣味は、何となく明治趣味(文明開化趣味)とか、大正期の南蛮ブームの影響を受けているんじゃないか…ということです。一言でいえばハイカラ趣味。これはもちろん上で挙げた名前とも結びついているはずですが、ここで言うハイカラ趣味とは、主に北原白秋や木下杢太郎経由のもので、イメージで言うと川上澄生の版画の世界。ブログの紹介文に入っている「郷愁」の語は、どうやらああいう世界観に由来するらしい…というのが、今日自覚したことでした。

異論もあるでしょうが、私の内部では、この系譜に連なる人として安野光雅さんがいて、その水脈は、世界がボーダレス化した今も、この国に豊かに流れていると睨んでいます。

永遠に憧憬の異文化。初めて見るのに懐かしい世界。想念の中だけに息づく、ありそうでない世界。
<天文古玩趣味>は、きっとそんなものと結びついているのでしょう。
天文骨董好きは、諸外国にも多いと思いますが、上のような情調や陰翳は、日本独自の文化的コンテクストから生まれたものであり、多分に特殊な展開だという気がします。