油蝉の‘聞きなし’2009年08月08日 10時38分49秒

(↑加藤正世の昆虫図鑑。外箱にあいた穴から表紙の一部が見える凝ったデザイン)

暑いですね。
蝉の声も盛んです。
ところで、今朝布団の中で蝉の声を聞いていて思ったんですが、例の茶色いアブラゼミ。あれは一体何て鳴いてるんでしょうか。

ミンミンゼミなら 「ミーン、ミーン」、
ツクツクボウシなら 「オーシーツクツク」、
ヒグラシなら 「カナカナカナ」
と、分かりやすい“聞きなし”があるわけですが、一番身近なアブラゼミの声は、何だかやたら騒がしいばかりで、よく分からないです。

アブラゼミの声が雑音化しやすいのは、(虫の声を左脳=言語脳で処理すると言われる)日本人の脳をもってしても、あまり言語らしく聞こえないからじゃないでしょうか。

そこで、今朝はアブラゼミ氏の声を、これまでの人生において初めて最初から最後までじーっと耳を澄ませて、聞きとってみました。

鳴き始めは、
ウシウシウシウシウシ

しばらくすると、熱が入ってきて
ジュンジュンジュンジュン
ジュッジュッジュッジュジュッジュッジュッジュッ…

で、最後は、
ジジジジジジ  シー

私の耳にはこんな風に聞こえました。結構いろんな音を出していますね。
ついでなので、他の人にはどう聞こえるのか、手元にある図鑑を見てみました。

○伊藤修四郎・奥谷禎一・日浦勇(編著)、『全改訂新版・原色日本昆虫図鑑(下)』
 保育社、昭和52年
 「『ジ、ジ、ジ、……』とやかましく鳴く」
○古川晴男・中山周平(著)、『昆虫の図鑑』(小学館の学習図鑑シリーズ2)
 小学館、昭和33年〔第8版〕
 「ジージー」
○平山修二郎(著)、『原色千種昆虫図譜』
 三省堂、昭和8年
 「ぎーぎート鳴ク」
○加藤正世(著)、『分類原色日本昆虫図鑑3(同翅目)』
 厚生閣、昭和8年
 「鳴声ジー或はシュルヽヽヽヽ。」

最後の加藤正世氏は「セミ博士」と呼ばれた人なので、さすがに観察が細やかです。あとの人はちょっと投げやりな感じですね。

  ★

さて、これでアブラゼミの大合唱も、改めてしみじみ聞けるようになるでしょう(多分)。

【付記】
先入観を捨てて聞いてみると、おお、確かに「シュルルル」と軽やかに聞こえるときがあります。セミ博士恐るべし。

コメント

_ shigeyuki ― 2009年08月08日 23時47分38秒

僕の住んでいた神戸では、一番多かったセミはクマゼミで、朝早くから公害のように鳴いてました。
<b>しゃあしゃあしゃあしゃあ<font size="5">しゃあしゃあしゃあしゃあ</font></b>
って感じで、寝てられやしなかったなあ。
いまでは懐かしいですけれど。

_ 玉青 ― 2009年08月09日 20時45分33秒

クマゼミは着実に北上中のようですね。
私が子供のころは、東京では全く未知のセミで、伊豆の方の親戚の家で初めて耳にして、感動したのをよく覚えています。人間の短い一生の間で、これほどはっきり生物の分布が変わるというのも、何となく空恐ろしい気がします。

_ S.U ― 2009年08月27日 08時01分57秒

ツクツクホウシの季節になりましたが、セミの生態の話に戻らせていただきます。
 ここ数日の間に2度、セミの「襲撃」を受けました。一度は自転車で歩道を走っている時に、顔にアブラゼミがぶつかりました。1時間ほど痛みが残りました。2度目は、ベランダに出ようとした時にクマゼミ(?)が首にぶつかって、そこにとまってしまいました。
 ここ3年ほど、セミが人間の領域に入ってくることが増えたように思います。ベランダや玄関先などにアブラゼミが死体をさらすようになりました。昆虫の苦手な私にとっては、うれしい話ではありません。
 これはごく一部のセミのことで、大部分のセミは真面目に自然に生きているものと思いますが、近年、急にセミのモラルが低下しているのではないか、と感じられます。

_ 玉青 ― 2009年08月27日 20時53分38秒

「どうも近頃の若けえセミどもは…」
「ああ、なっちゃいないねえ」
「まったく、親の顔が見てえもんだ」
「何でも、あそこは親父もお袋も7回忌だそうだ」
「へええ、能天気に見えて、意外に苦労してんだなあ…」

_ S.U ― 2009年08月27日 22時08分34秒

私の首にとまったセミは、朝になっても窓際にいましたが、夜が明けて色をよく見ると、クマゼミではなくツクツクホウシでした。

 そうかぁ、セミはモラルを親に習うことも先輩に習うこともないのですね。モラルの低下があるなら、それはヒトを見習ったものか。何にしても困ったものです。

_ 玉青 ― 2009年08月29日 16時26分02秒

今日は遠くでツクツクボウシが1匹だけ鳴いていました。
蝉も主役の座を下り、季節は秋へ。
今年生まれた蝉の子供たちが大人になるのは数年後でしょうが、その頃人間社会はどうなっているのでしょうね。蝉に愛想づかしをされるような社会でないといいのですが…

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