18世紀のクレムスミュンスター天文台を訪ねる2009年09月24日 22時11分14秒

さて、往時のクレムスミュンスター天文台は、どんな姿をしていたか?

円筒形のドラムに乗った半球ドームという、我々が普通に抱く天文台像は、おおむね19世紀に成立したイメージですから、18世紀の天文台には当てはまりません(そもそもドームを必要とするような、大型機材はまだなかった時代ですから)。

上の図はたびたび引用している、マリアン・C.ドネリーの『天文台略史 A Short History of Observatories』(1973)より、1756年当時のクレムスミュンスター天文台内部の様子。四分儀や天頂儀、それに長焦点の小型―といっても当時はそれなりに大型の―屈折望遠鏡などが見えます。

これは18世紀後半の天文台の典型的な姿だと、ドネリー女史は述べます。あるいは「天文台」というよりも、「観象台」という古風な呼び方のほうがしっくり来そうな風情ですね。

星雲よりも星団よりも、二重星よりも変光星よりも、星の色よりも光度よりも、何にもまして星の「位置」こそが重要だった時代。描かれた観測機材からは、そんな時代相が伝わってきます。(…ちょっと宣伝めいて書かせてもらえれば、この後にウィリアム・ハーシェルという天才が現われてからですね。星や宇宙それ自体の構造や性質を研究する学問が生れ、恒星世界にロマンの香りが漂うようになったのは。)


ところで、ドネリー女史の本を読んで、昨日の説明にはちょっと修正が必要だと分かりました。が、それはまた明日。

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