ジョバンニが見た世界…銀河の雑誌と大きな本(4)2009年12月05日 21時29分23秒

きょうは朝から冷たい雨が降り続いていましたが、
夕暮れになって俄かに太陽が顔を出しました。
黒雲と白雲が重なり合う空を茜色の光が染め、
息をのむような黄金世界が、ほんの一瞬、この地上を覆い尽くしました。

  ★

さて、ジョバンニとカンパネルラの住む町に話を戻して、
彼らはきっとこんな本↑を開いていたんではないでしょうか。

アルフォンス・ベルジェ『天空』(1923)の1ページ。
右ページのキャプションには、「天の川の縁の光景。たて座の恒星雲。ヤーキス天文台のE.E.バーナードによる撮影(露出時間5時間30分)」とあります。

この本には、他にもヤーキス天文台やウィルソン山天文台で撮影された、目を惹く銀河の写真が何枚も載っています。

ヤーキス天文台の主力は、1897年完成の102センチ屈折望遠鏡、ウィルソン山のそれは1917年完成の254センチ反射望遠鏡です。それぞれ屈折式、反射式として、当時世界最大を誇りました(驚くべきことに、ヤーキスは今でも世界一巨大な屈折望遠鏡です)。

アメリカの巨人望遠鏡は19世紀の末に至って、フランス人の愛国心と想像力をはるかに超えたレベルにまで進化を遂げ、フランスの天文学書でも、それらの望遠鏡で撮影された写真がなければ紙面構成ができなかった…のだと思います。

ジョバンニたちが、その名前から想像されるように、イタリアの地方都市に住んでいたとしても、事情は変わらなかったでしょう。

こうした新時代の天体写真が、20世紀の人々の<宇宙>イメージを形成する上で圧倒的な力を持っていたことは間違いなく、それは賢治の創作活動にも影響したことでしょう。

(この項つづく)

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