ジョバンニが見た世界…銀河の雑誌と大きな本(6)2009年12月20日 10時59分25秒

日常、妖怪にはなかなかお目にかかれませんが、奇怪な偶然には時おり出くわします。今それで頭がクラクラしているので、そのことを書きたいのですが、まずは本題の「雑誌」の話から。

  ★

以前も引用した(※)井田誠夫氏の「宮沢賢治と銀河・宇宙」(西田良子編『宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を読む』‐創元社‐所収)は、この「雑誌」の件にも触れています。
(※)http://mononoke.asablo.jp/blog/2008/05/03/3449422

井田氏の立場は、ここで私が書いているような「もし、あの作品世界に現実世界のモノが登場するとしたら、どんなものが相応しいか?」という外野的な興味ではなしに、賢治自身が実際に影響を受けたであろうものを論考するというものです。

井田氏は、賢治の天文知識のソースである、盛岡高等農林の図書館蔵書目録を調べて、そこに「天文月報」(日本天文学会発行)があったことを報じています。同校の生徒は新着雑誌を自由に読むことができたので、賢治は在学中から(あるいは卒業後も)同誌から天文学の動向について最新の知識を得ていたのではないか…と、井田氏は推測しています。

井田氏が「天文月報」と並んで注目しているのが、「子供の科学」誌です。

「大正十三年十月創刊の『子供の科学』は少年少女向き科学雑誌
である。〔…〕『子供の科学』はその後も、天文関係の記事や写真
をとりあげ、賢治が亡くなる昭和八年の九月号(第十八巻第三号)
は天文特集で「大宇宙の構造」図がついている。」(上掲書235頁)

「銀河の説明を雑誌で読んだとくり返し書く賢治自身も『天文月
報』や、〔…〕『子供の科学』等の雑誌から新しい天文情報を得たの
ではないだろうか。」(同233頁)

確証はないまでも、常識で考えれば、例の「雑誌」の一語に、賢治自身の読書体験が反映されているのは、ほぼ確実でしょう。その有力候補が「天文月報」であり、「子供の科学」等である、というわけです。

で、私の興味は、欧米における子供向け科学雑誌の歴史にと向くのですが、もし「子供の科学」に外国雑誌の影響があれば、その筋から調べが付かないかと、創刊時の事情を知ろうと思って、写真↑の本を手に取りました。


(「奇怪な偶然」の話も含め、この項続く)

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