「見せる」理科室2010年04月24日 08時56分38秒


理科室の写真を撮りたい。しかも、「見せる写真」を…!
きっと学校の先生はそう思ったのでしょう。
そこで、精いっぱい「理科室らしさ」を演出するために、いろいろなモノを机上に並べてみたと。その思いが熱く、またちょっと珍妙にも感じられる写真です。

画像を拡大(クリック)して、どうぞ机の間をゆっくり歩いてみてください。
当時、「理科室らしさ」がどんな風に考えられたか、それが伝わってくるようです。

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写真師がいよいよ明日来ると聞いて、先生はこんな風に考えました。

「ふーむ、理科室のすごさをみんなに伝えなきゃいかん。
うん、まず壜詰め標本だな。これは何と言っても子供たちに人気がある品だ。みんなキャーキャー言いながら、けっこう熱心に見てるじゃないか。魚だって、ネズミだって、こうやって解剖してこそ、生物の精妙さが伝わろうというものさ。
それから鳥の剥製だ。これはちょいと豪華だし、父兄にも好評だからな。
あとは地球儀と三球儀。そう、宇宙の神秘だ。20世紀の科学を学ばんとする者、すべからく宇宙に関心を持ち、アインシュタイン博士に続くべし!と。
さーて、教卓には何を置くか…。やっぱりここは一つ教師の威厳を示すものでなくちゃな。生徒が気安く触れないようなものを…えーと…うん、七色回転板と誘導起電機。そう、これだ。これさえやって見せれば、どんないたずら坊主だって授業に釘づけさ。こないだだって…」

こうして、その日は理科室の明かりが夜遅くまで煌々と付いていたそうです。

【絵葉書データ】
●タイトル:「豊山小学校 理科手工室」
●時代:大正~昭和初期
●場所:豊山小学校というのは何となくありがちな名前ですが、検索しても愛知県にある同校しかヒットしないので、たぶんそこでしょう。明治40年に開校し、今ではイチローの母校として有名(らしい)。
●備考:理科手工室というのは図工室兼用の理科室のことで、そのため各机に万力が付いています。