ジョバンニが見た世界…銀河のガラス模型(1)2010年06月08日 20時44分22秒

(M104、ソンブレロ銀河。Wikipediaより。画像ソースはNASA)

さて、寄り道から本道に戻り、『銀河鉄道の夜』に登場する天文アイテムの話題を半年ぶりに再開します。

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これまで取り上げたのは、作品の冒頭に登場する<天文掛図>と<銀河の雑誌と大きな本>の話題でしたが、今回は話の順番に沿って「銀河のガラス模型」がテーマです。

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 先生はまた云いました。
 「〔…〕この模型をごらんなさい。」
  先生は中にたくさん光る砂のつぶの入った大きな両面
 の凸レンズを指しました。

 「天の川の形はちょうどこんななのです。このいちいちの
 光るつぶがみんな私どもの太陽と同じようにじぶんで
 光っている星だと考えます。私どもの太陽がこのほぼ
 中ごろにあって地球がそのすぐ近くにあるとします。
 みなさんは夜にこのまん中に立ってこのレンズの中を
 見まわすとしてごらんなさい。こっちの方はレンズが薄い
 のでわずかの光る粒即ち星しか見えないのでしょう。
 こっちやこっちの方はガラスが厚いので、光る粒即ち
 星がたくさん見えその遠いのはぼうっと白く見えるという
 これがつまり今日の銀河の説なのです。〔…〕」

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この美しい銀河模型。銀砂子の散った凸レンズ型のオブジェというのは、何だか本当にありそうな気がします。そして私自身、これまでずいぶん気にかけて探してきましたが、まだお目にかかったことはありません。

残念ながら、これは現実の天文教具としては存在せず、純粋に賢治の創作なのだと思います。(もちろん私が見たことがないから、即「ない」とは言えませんが、仮に存在するにしても、非常に希少なものでしょう。)

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このガラス模型をめぐって、これから考察をしていくのですが、その前に銀河系を「凸レンズ」にたとえた例を見ておくことにします。

(冗漫ながら、この項つづく)