棚の奥から(2)…ユカタンビワハゴロモ2010年07月10日 10時24分04秒

片付け道中記の2回目は、南米に住むユカタンビワハゴロモの標本です。
一見、蛾のようにも見えますが、セミやカメムシに近い仲間(半翅目)です。

擬態の例として有名な昆虫。
頭部の先がまるでワニの顔のように見えて、これと後翅の目玉模様とで外敵を驚かす…というのですが、実際のところ、どの程度効果があるんでしょうか。

…と思って、荒俣宏氏の『世界大博物図鑑』(第1巻、蟲類)を開いてみたら、さすがに遺漏がなく、同書はこの虫をヨーロッパに最初に紹介した女流博物学者、マリア・シビラ・メーリアン(1647-1717)筆の美麗な図を掲げつつ、彼女がこの虫の頭部が光ると報告したエピソードや、それに言及したロジェ・カイヨワのこと、そして「ワニの擬態」説は、どうもジュリアン・ハクスレー(1887‐1975)の発言に尾ひれがついたらしいことが書かれていました(荒俣氏自身はこれを「突飛な説」と述べています)。

結局のところ、この奇怪な頭部の正体は、今もって謎のようです。したがって、効果のほども不明。(たぶん、人間相手には効果がありそうですが、人間が新大陸に進出するはるか以前から、彼らはこんな出っ張りを鼻先にぶら下げていたはず。)

  ★

この標本は昔、昆虫趣味の「西の聖地」、岐阜の名和昆虫博物館(http://www.nawakon.jp/)で買いました。同館は1919年(大正8)に開館し、建物も当時のまま。隣接する記念昆虫館の建物はさらに古く、1907年(明治40)の竣工です。

うん、この夏は久しぶりにまた訪問してみようか…と、記事を書きながら思いました。
こんもりした金華山の緑と、真っ白な入道雲をバックに、きっと素敵な景観が味わえることでしょう。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック