水鳥の夢、理科室の夢…棚の奥から(7)2010年08月18日 07時10分28秒

棚の奥へと向う旅も長くなり、天文の話からも一寸遠ざかっていますが、この旅もまもなく終りです。

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今日はふたたび鳥の剥製です。
水鳥の仲間、カイツブリ。別名は鳰(にお)。鳰が群棲した場所が「におのうみ」、すなわち琵琶湖の古名です。


台座の文字を見ると、「カヒツブリ」とあって、戦前の剥製であることを露呈していますが、この鳥の名前は語源がはっきりしないらしく、戦前の図鑑でも「カイツブリ」の表記が普通のようでもあります(例えば、黒田長礼『鳥類原色大図説』、内田清之介『日本鳥類図説』など)。

それはともかく、こうした理科骨董に類する標本の場合、標本そのものと並んで、台座やケース、ラベルなどが重要で、特に昔の大学者が書いた標本ラベルなどは、茶道具における箱書、あるいは利休の書付のように珍重する人もいるらしい。

この剥製は、この前のガラス壜と同じ女学校から出たもので、このラベルも昔の先生が書いたか、剥製業者が書いたかのどちらかでしょうから、まあ、そこまで珍重する必要もありませんが、それでも昔の理科室の暗い空気を感じさせて、なかなか味わいの深い気がします。

つぶらな瞳。

上の2枚はコントラストがきつく、羽毛が硬く感じられますが、実際の質感は下の写真に近く、よりフワッとした感じです。(旅の最終目的地、エビ・カニの住む箱は、このゴチャゴチャとした堆積の奥になります。)