昼下がりの理科準備室2010年11月12日 06時14分58秒

ちょっと気分を変えて、久しぶりに理科室絵葉書です。

世に理科室絵葉書は数々あれど、私を惹きつけるのは、何かドラマを感じさせる品です。たとえば上の1枚。

京都市にあった日彰尋常小学校(現・高倉小学校)の理科準備室を写した、戦前の絵葉書です。これは、「理科室」(=授業をする部屋)ではなくて、「理科準備室」を写した点でも、比較的珍しい作例ですが、それにしても、この不思議な空気はいったい…?

学校の絵葉書というと、先生は一応熱心に教育に励んでいるポーズをとるのが普通だと思いますが、この先生は「これがオレ流」と言わんばかりに、どかっと足を組んで、まったくの自然体です。そして生徒を完全に無視して、うつむき加減で何やら物思いにふけっています。
3人の少年たちも、先生のことなどお構いなしに、めいめい勝手に実験に没頭しています。

構図も何だか妙ですね。戸棚を全開にして、きっと棚に並ぶ備品を見せたかったのでしょうが、そのわりに見せる工夫に乏しく、訳の分からない絵柄になっています。そして、視線の先には人体模型が逆光に浮びあがって、不穏なムードをいっそう高めています。

何だか凝っているようでもあり、ずさんなようでもあり、凝り過ぎて失敗したようでもあり、でも妙に格好良くも見える不思議な作品。

コメント

_ S.U ― 2010年11月13日 08時28分23秒

いきなり基本的な疑問で恐縮ですが、学校が理科室絵はがきを作ろうとするきっかけは何なのでしょうか。
 学校の記録や宣伝、あるいは卒業生の思い出のために役立つ、という効果はわかるのですが、絵はがきにするぞ、という発想の直接のとっかかりがわかりません。
 ただ単に、写真を大量に焼き増しするためには絵はがきがもっとも安上がりな方法であったということでしょうか。

_ 玉青 ― 2010年11月13日 09時16分59秒

この手の古絵葉書は、今ではバラで流通していますが、本来は袋入りの何枚セットかで制作されたもので、そうした袋の表書きを見ると、「新築記念絵葉書」とか、「○○県主催研究会記念」とか書かれています(後者は、その学校で大規模な教員集会が開かれたのを記念して制作されたもの)。

ですから、基本的には何かの記念行事の際の「配り物」にするというのが、その制作目的だったのでしょう。そんな場合、今だと「記念誌を作ろう」という発想になると思いますが、昔は絵葉書がそのためのツールとして重宝されていたみたいですね。

(もちろん、理科室絵葉書は単体で作られたのではなく、他の校内風景と共にセットを構成するものです。)

_ S.U ― 2010年11月13日 14時34分02秒

イベント記念ですか。よくわかりました。ありがとうございました。
(といっても、日常の理科室風景とイベント記念とが結びつくものか本当には納得いっていません...)

 確かに記念とか施設紹介の絵はがき集というのが二、三十年くらい前まではありましたね。現在は絵はがき集自体が廃れて、もはや有名観光地の案内と美術関係のもの以外は絶滅しつつあるのではないでしょうか。

 現在ではwebページやCD-ROMなどで代用できるのですが、この手の用途はどうも電子メディアに向いていない(永続性が信用できない。古いCD-ROMを眺めることは実際にはほとんどない)ような気がします。どっちみち、もらってもどうということのないものですが、古い書類を整理している時にふと目を止める、というのが記念絵はがきの最大の価値かもしれません。

_ 玉青 ― 2010年11月13日 20時59分42秒

>現在は絵はがき集自体が廃れて

本当ですね。
でも、そんな時流に抗して、あえて出すとかえって新鮮かも。
「天文古玩5周年記念」と銘打って配り物にするとか(笑)。

_ S.U ― 2010年11月14日 08時47分16秒

あっ、いいですね。「名場面集○枚セット」とか。
私らの天文同好会にもそのアイデアいただき!(笑)

_ 玉青 ― 2010年11月14日 15時27分14秒

では、瓢箪駒といきますか!

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