雲よ!2010年12月10日 07時04分05秒

悲しい時、淋しい時、楽しい時、疲れた時、気分が高揚した時。
雲は、折に触れて湧いてくる感情を托すのに、ふさわしい相手です。

雲も、感情も、どこからともなく湧いて出るものだからでしょうか。
心をよぎるのが感情で、空をよぎるのが雲。
遥かな高みにある星々よりも、雲は我々にずっと近しい「有情の存在」という気がします。


↑は昭和13(1938)年発行の「雲形図」。
発行者は水路部です。水路部というのは、今は海上保安庁の所管ですが、昔は海軍に所属し、文字通り海図の作成や海洋測量を行うほか、海洋気象観測も掌っていたので、こうした図が作られたわけです。


そういう理由だからでしょう、各種雲の図はたいてい海の上に浮かんでいます。



ちょっとピンぼけですが、下は凡例と観測要領の解説。


ご覧のとおり、この図にはあちこち書き込みがあります。
「機上ヨリ見」た塔状雲には、「高積雲又ハ積雲カラ 幾ツカノ小サナ雲柱ガ並ンデ 聳立スルモノ 雷雨ノ前兆」と几帳面にペンで書かれています。

   ★

昭和13年。いろいろなことがあり、そして、いろいろなことがその後に続きました。
この図の以前の持ち主は、いったいどんな思いで雲を見上げていたのでしょうか。
機械的観測ばかりでなく、時には喜怒哀楽をそこに投影することもあったんでしょうか。おそらくそうだろうと想像しますし、ぜひそうあってほしいです。