明治日本のアマチュア天文家…前原寅吉翁のこと(9)2010年12月28日 18時54分55秒

結局のところ、ハレー彗星の太陽面通過の一件について、私は全否定に近い立場をとるわけですが、何度もいうように、私は寅吉翁(以下、敬意をこめて翁と呼びます)の生涯は、アマチュア天文史の中に正当に位置づけられるべきだと考えます。
しかし、あまりハレー彗星の件にこだわってしまうと、仮にそれが否定されたとき、寅吉翁の業績が一切合財すべて否定されかねません。私はそれをいちばん恐れます。

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寅吉翁は100点満点の聖人であったのか?

『野の天文学者』を読むと、真面目で、賢く、人々の不幸を憂い、平和を愛し、ユーモアにあふれ、妻には優しく…といった人物描写が続きます。

もちろんそんなはずはないでしょう。寅吉翁には真面目なところも不真面目なところもあり、賢いところも愚かなところもあったと思います。むしろ、世間の物差しから外れても平然と我が道を行った人ですから、少なからずエキセントリックな人だったと思います。虚心に見ると、その説には奇説めいたものが多い感じです。

そもそも、私は奇想や奇行の人は好きですが、聖人や偉人はあまり好きではありません。聖人でない人を聖人に祭り上げることにも反対です。愚神礼賛じゃありませんが、
人間は愚かだからこそ愛すべき存在なのではありますまいか。

あるいは、寅吉翁に奇人になってほしいという、逆バイアスが私にはかかっているのかもしれません。でも、「偉大なる奇人」としての寅吉翁に、私はどうしてもより大きな魅力を感じてしまうのです。

(この項おわり)

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