続・明治の理科室2011年01月10日 15時30分52秒

古い理科室絵葉書のつづき。


画像は明治38年(1905)10月の消印がある絵葉書。これまた妙に凝った明治調。
(いろいろ考えると、浄土真宗系の北海女学校(現・札幌大谷高校)の絵葉書ではないかと思うのですが、ただ同校は1906年4月開校なので、年代がちょっと合いません。正式開校前から授業を行っていたのでしょうか?)


↑中央部拡大。
よく見ると、ここも階段教室で、そして教卓には誘導起電機が置かれています。
一昨日の味噌蔵町高等小学校とよく似たシチュエーションなのが興味深い。

黒板を見るとちょうど電気の授業中なので、別に起電機があっても不思議ではありませんが、たびたび理科室絵葉書を載せる中で判明したのは、理科室絵葉書でいちばん登場率が高いのは、この誘導起電機だという事実です。明治から昭和戦前にかけて、この傾向は一貫しています。20世紀の科学は、何よりもまず電気であった…ということでしょうか。したがって、この絵葉書でも「理科室らしさ」を演出するために、意識してこの場面を選んだ可能性も高そうです。

   ★

以前、人体模型を理科室の王と呼んだことがありますが、実は本当の王は誘導起電機で、人体模型と骨格模型は、「金・銀」あるいは「飛車・角」ぐらいなのかもしれません。(でも、私自身は誘導起電機を学校で見た記憶はありませんし、依然、人体模型が理科室のヒーローだと思っているんですけどね。)

コメント

_ S.U ― 2011年01月10日 20時15分12秒

 私も誘導起電機を使った記憶はありません。学校にあったようには思います。私たちの時代は静電気の実験といえばヴァンデグラフでしたね。ヴァンデグラフはスマートでかつ誘導起電機に劣らぬ凄みがありますが、電気発生器なのに電動モーターを使っているのが弱点と言えるでしょう。

_ 玉青 ― 2011年01月11日 20時36分48秒

うーん、これまた記憶にありません。
そもそもヴァンデグラフとは何ぞや?というぐらいでして…

で、さっそく検索したわけですが、下の商品案内によると誘導起電機(手動式静電発生器)の5万ボルトに対して、ヴァンデグラフは20万ボルト。さすが機械のパワーはすごい。
http://www.catv296.ne.jp/~sun-east-res/final3b.htm

静電気関係の授業というと、箔検電器のぴょこぴょこ動く様ぐらいしか記憶にありません。理科の学習指導要領の関係でしょうか。あるいは私自身の興味関心の偏りのせい…?(笑)

_ S.U ― 2011年01月11日 22時12分44秒

>ヴァンデグラフ...
 カタカタと乾いた連続音が教室に響き、生徒たちの緊張とともに上の球の電圧が高まる。やがて、脚だけガラス製の奇妙な木の踏み台に立ち球に触るあわれな生徒の髪の毛は総逆立ち。驚くクラスメートが思わずそれを指させばピチッと指先から青紫の放電の火花... これでご記憶にないなら、指導要領の変化のせいでしょう。

ちなみに、ヴァンデグラフは原子核研究用の加速器の電源として開発されたもので、比較的歴史が浅く、実用化は1930年ということですので、大正時代にはありませんでした。

>箔検電器
 これも、猫の毛皮とエボナイト棒という怪しげなアイテムとセットでした。静電気の実験装置は凄みは、エレキテル以来の伝統で、「理科室の王」たるにふさわしいものです。

_ 玉青 ― 2011年01月12日 21時00分40秒

>エレキテル以来の伝統〔…〕理科室の王

おおお!それを考えれば静電気の学習は、仇やおろそかにはできませんね。
思うに人体模型は『解体新書』など「腑分け」の記憶を呼び覚ますものでしょうし、理科室を支配する基調音は、蘭学以来の伝統だったのかもしれません。ええ、何だかスッと腹に落ちるものがあります。新古入り混じったあの不思議な感覚は、蘭学受容の民族的記憶とつながっており、そこにこそ欧米の理科室とは違う、日本の理科室の特質があった…。理科室文化論を(熱く!)語る上で欠かせない、壮大なテーゼが生まれました。

   +

ヴァンデグラフの鮮烈な描写。相当なインパクトがあったようですねえ。
うーん、でもやっぱり目にしてないですね。
静電気に関する項目が学習単元から外される(外された)ことは考えにくいので、これは授業進行の都合から先生が端折った…というのが真相かもしれません。

(ちなみに理振法をチェックしたら、「静電高圧発生装置」は中学と高校の設備基準品目には入っていますが、小学校のそれには入っていませんでした。規格としては、ウィムズハースト型〔例のグルグル回すやつ〕でも、ヴァンデグラフ型でもよく、その辺は学校側が自由に選択可能だったようです。)

_ S.U ― 2011年01月13日 20時37分21秒

うーん。私も個人的に贔屓の理科室グッズはあるのですが(光学系ははずしたくない)、蘭学の筋金入りの静電高圧発生装置と人体模型が表彰台に上がるのはいかんともしがたいです。

>理振法
 よく覚えていませんが、私の場合、小中高でヴァンデグラフは通算2~3回お披露目されたと思います。内訳は忘れました。上の「鮮烈な描写」はたぶん中学校の理科授業での実話です。

_ 玉青 ― 2011年01月14日 19時53分45秒

>個人的に贔屓の理科室グッズ…光学系ははずしたくない

おお、この話はたぶん初めてうかがいますね。
でも、この場では勿体ないので、後ほど光学系の理科室グッズが登場した際に、是非思いの丈をご披露下さいまし。

>小中高でヴァンデグラフは通算2~3回

ものすごいヒット率!よほどご縁が深いのでしょう。
私はさしずめ縁なき衆生ですが、でも、体質的に電気がたまりやすいらしく、冬場は人間起電機のごとく派手に放電しまくっています(笑)。

_ S.U ― 2011年01月14日 21時16分57秒

>後ほど光学系の理科室グッズが登場した際
 そうですね。光学系は「天文系」とますます密接分野ですから。

>ものすごいヒット率
 そのあと、大学で、実物は見ませんでしたが、加速器として勉強しましたので、ヴァンデグラフは小中高大のグランドスラムだったかもしれません。

_ 玉青 ― 2011年01月15日 12時29分01秒

世の中には、いろんなグランドスラムがあるもんですねえ…^_^

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック