プラトンの立体 ― 2011年07月09日 21時49分40秒
さて、ケプラーの宇宙モデルから、正多面体にちなむモノへと話をつなげていきます。
ぬっと出た、棺のような木箱。
一木造りで、なんだか堂々としていますが、さしわたしは17cmちょっとですから、そんなに大きなものではありません。
一木造りで、なんだか堂々としていますが、さしわたしは17cmちょっとですから、そんなに大きなものではありません。
そっと蓋を開けると、中には5つの円孔が穿たれ…
それぞれにコロンした物体が入っています。
入っているのは、指先でつまめるぐらいの、小さく透きとおった正多面体。
天然水晶を削り出して作られています。
そのため、内部に曇りがあったり、縁が欠けているものもあります。
この品は、水晶本来の結晶形とは無縁の、人工的な造形なので、鉱物趣味の徒からすればあまり感心できないかもしれませんが、多面体という抽象的な形象を表現するのに、水晶という素材はごく相応しいような気がしなくもない。
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ところで、正多面体が5種類あることは古代ギリシャの頃から知られていて、プラトンもそれについて解説していることから、別名「プラトンの立体」と呼ばれているそうです。
古代中国では「陰陽五行説」、すなわち【木・火・土・金・水】の5元素説をとっており、これは当時知られていた、地球以外の5つの惑星とぴたりと対応します。
さらに、もし中国人が正多面体が5つであることを知っていたら、彼らは【多面体-元素-惑星】を関連づけて、古代の科学を大いに賑わしたことでしょうが、残念ながらそうはなりませんでした。
さらに、もし中国人が正多面体が5つであることを知っていたら、彼らは【多面体-元素-惑星】を関連づけて、古代の科学を大いに賑わしたことでしょうが、残念ながらそうはなりませんでした。
いっぽう、ギリシャ人は【土・水・空気・火】の4元素説を唱えたので、これを多面体と関連付けて、正4面体=火、正6面体=土、正8面体=空気、正20面体=水と、ここまではいいですが、余った正12面体の処置に困って、これは「宇宙」を表すのだと、ちょっと苦しい解釈になりました。
いっぽう、多面体と惑星を対応づけるという考えは(5対5でちょうど据わりがいいはずなのに)ついに浮ばなかったらしいのは、不思議といえば不思議です。
★ 7月10日付記 ★
要するに、中国では「元素-惑星」、ギリシャ以来の西洋では「元素-多面体」の対応は論じられてきたものの、「惑星-多面体」の対応は、ケプラーの脳内で結びつくまで放置されていたらしい…ということです。
で、これは全くの思い付きですが、ケプラーが多面体宇宙モデルを発表したのは、彼が25歳の時(1596年)、その第1主著『宇宙の神秘 Mysterium cosmographicum 』の中においてで、時代背景を考えると、ひょっとしてそこには、宣教師経由の中国に関する知識が影響していないかなあ…と思うのですが、どうでしょう。
陰陽五行説は、地上界のすべての現象を、5大惑星と太陽・太陰(月)と関連付けるという、すぐれてコスモロジカルな理論ですから、占星の術を能くしたケプラーがそれを耳にしたら、いたく興味を引かれたことでしょう。
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