ミネソタはぐれ剥製師連盟とは? …剥製を熱く語る人々(その1)2012年02月12日 17時34分58秒

【急いで訂正】
よく見たら、rogue(ごろつき、はみ出し者)とrouge(ルージュ)を見間違えていました。表題を上記のとおり訂正します。“紅色剥製師”…何とも素敵な名称なんですけれどね(私がそう名乗ろうかしら)。

    ★

(↑ サイエンス・チャンネル「Oddities」の共同司会者、Ryan Matthew Cohn の自宅風景。下記ページより寸借)

大変興味深い記事を読みました。そして大いに考えさせられました。

Taxidermy Comes Alive! On the Web, the Silver Screen,
  and in Your Living Room
 (Collectors Weekly 2011年9月27日号)
 http://www.collectorsweekly.com/articles/taxidermy-comes-alive/

筆者のリサ・ヒックスは、フリーのライター。 彼女は、剥製の作り手、コレクター、研究者、ディーラーなど、あちこちに取材して、「剥製界の今」をさまざまな角度から描いています。

それにしても皆さんはご存知でしたか? 今、剥製が熱いブームだということを。

記事によれば、剥製ブームは2000年代初期、都会の尖端的な人々(urban hipsters)や自作派アーティスト(do-it-yourself artists)の間から始まり、今や米国ではすっかりポピュラーなものになっているそうです。

これは第2次大戦後に生じた剥製ブームから、半世紀を隔てた再流行で、家庭でも店舗でも、最近はあちこちに鹿やらカモシカやらの首や角が飾られ、その需要を満たすために、紙やプラスチックでできたイミテーションまで売られているというのです。

そうしたブームの中で、あのデロールも、ファッショナブルな存在として銀幕に登場し、ウッディ・アレンが監督したロマンティック・コメディ、『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)では、デロールが不思議なパーティー会場として出てくるという具合。(注:今確認したら、予告編にもチラリと写っています。http://www.youtube.com/watch?v=qPev0UA0lmw ← 1分15秒のあたりを見てください。)

最近では、モデルのケイト・モスや、歌手のコートニー・ラブ、コメディアンのエイミー・セダリス、カリスマ主婦のマーサ・スチュアートといったセレブたちも、こぞって剥製を手元に置いて愛玩しているし、剥製関連本も続々と出版され、いずれも売れ行き好調だとか。

そんな中、2004年に、3人のアーティスト(=ロバート・マーベリー、スコット・ビーバス、サリーナ・ブリュワー)が立ち上げたのが、現代アートとしての剥製に取り組む 「ミネソタはぐれ剥製師連盟 (Minnesota Association of Rogue Taxidermists)」です。彼らは、伝統的な剥製師からは異端視されているものの、今や世界中で50人以上のアーティストを擁する、剥製界の新勢力。

さて、そうした剥製界の表面的な活況の奥で、いったい何が起きているのか、何がこのブームをもたらしたのか、リサの記事は「業界人」の間でも様々に意見の分かれるこのブームの背景に、鋭く切り込んでいくのですが、それはまた次回。(面倒でない方は、どうぞ元記事をご覧ください。)

【付記】
それにしても、マイブームとしての「驚異の部屋」熱は、この海外の剝製ブームとは独立に生じたものだと思っていましたが、よく考えたらそうではないかもしれません。

東大総合研究博物館でミクロコスモグラフィア マーク・ダイオンの[驚異の部屋]展(2002-2003)が開催されたことや、1990年代末からデロールがメディアに露出度を高め、時代の寵児となっていく過程は、この「アートとしての剥製」ブームと必ずや結びついているはずであり、そして、私は両者から強い影響を受けているので、剥製ブームの影響を間接的に蒙っている気がします。

人間の自由意志とはいったい何なのか? 私は時代の趨勢とは無関係に、自分の興味のままに振る舞ってきたつもりでしたが、実は時代の手の上で踊っていただけなのか? 考えてみると、ちょっと不気味な話です。

コメント

_ たつき ― 2012年02月15日 23時16分32秒

玉青様
素朴な疑問なのですが、欧米は毛皮に対する激しい反対派がいますよね。毛皮を着ている人にいきなりペンキをかけたりして。
こういう人たちと、剥製愛好ブームは矛盾しないのでしょうか。それとも、剥製と毛皮は別物なのでしょうか。
生き物の命を嗜好のために使うという意味では同じだと思うのですが。

話は変わって、自分が愛好していたまだあまり人に知られていなかったものが気がつくとブームになっていた、という経験は私も何度かあります。ただ私はその何回目かの時にときは、「自分はよほど世の中の平均的な嗜好を持つものなのだな」と感じてしまい、かなり落ち込んだものです。こんなおかしなものを好きになるのは私くらいだろう、と自負していただけに。
時代に踊らされている、と感じる方が、ずっと浪漫があるように思われます。

_ 玉青 ― 2012年02月16日 06時06分37秒

動物愛護の立場から剥製ブームに反対する人も当然いるようで、その辺のことも、この記事の続きで出てくる予定ですが、今日の記事で書いたような次第で、再開までもうしばらく時間がかかりそうです。

「まだあまり人に知られていなかったものが気がつくとブームになっていた」というのは、たつきさんが時代の先を行っていた、そして時代が後から付いてきた、とも言えるわけですから、大いに誇ってよろしいかと。

_ たつき ― 2012年02月17日 23時19分05秒

玉青様
剥製の話、続きを楽しみにしております。アメリカで動物の骨がわりと売れている、という話は知っていましたが、剥製ブームは知りませんでした。
さて、「時代の先端」なんてカッコイイとこに私はいたとは思えませんが、玉青さんの言葉は身にしみました。ありがとうございました。
でも、私が「先端」にいたとするならば、玉青さんだってそうではないでしょうか。少なくとも「驚異の部屋」については、確実に玉青さんは時代の先駆けでしょう。誇っていいことだと思いますし、私はそういう玉青さんの本物がわかる確かな感性が好きでいつもここにきています。
お仕事は大変でしょうが、これからも素敵なものを教えていただければ、と思います。

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