マルセイユ自然史博物館 ― 2012年07月22日 20時47分40秒
このあとも密教の話題が怪しくつづく予定ですが、いずれにしても理科趣味とは縁遠い話なので、この辺でちょっと一服して、別の話題をはさみます。
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季節柄、海にちなんで、潮の香りがただよう南仏マルセイユを訪ねることにしましょう。
↓は、マルセイユの自然史博物館の館内。1910~20年代の古絵葉書です。
同博物館は、モングラン侯爵、ヴィルヌーヴ=バルジュモン伯爵といった旧貴族の肝いりで1819年に創設され、もうじき創立200年を迎える、由緒ある博物館です。現在の場所(ロンシャン宮)には、1869年に移転してきました。
そのコレクションの核となったのは、同地に18世紀からあった「キャビネ・ド・キュリオジテ」すなわち「驚異の部屋」であり、その後、19世紀フランスにおける博物館ブームの追い風を受けて発展した…というようなことが、下の公式サイトには書かれています。
大英博物館もそうですが、ここも古いヴンダーカンマーから、現代的な博物館が生み出された歴史を体現している施設の1つなのでしょう。
さて絵葉書に戻ります。
建物の造作が全体にイタリアっぽいのですが、フレスコ画風の壁画にも、ちょっとイタリア趣味を感じます。しかし、その画題がいかにも珍妙。キャプションを見ると、「哺乳類総合コレクションおよび古生物学コレクション」とあって、この部屋の主題を表現しているのだと分かりますが、うーん、何というか、実に味のある絵です。
そして肝心の展示が、これまたすごいですね。
剥製&骨&化石のオンパレードですが、その展示密度が尋常ではありません。これだと、陳列ケースの間を人がすれ違うこともままなりません。これは「見せる」ことよりも、むしろ「見せつける」ことに主眼があるとおぼしく、この点において、この展示は(おそらく展示者の意図を超えて)ヴンダーカンマーへと先祖返りしているようにも見えます。
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