星と東方美術2012年07月25日 20時41分58秒

話が理科趣味からどんどんアウェイになっていきますが、天文趣味からはそれほど遠ざかるわけではありません。
なんといっても、御大・野尻抱影その人が、晩年に仏教美術と天文趣味を融合させた『星と東方美術』(恒星社厚生閣、1971)を上梓しており、星好きとして、大手を振ってその跡を慕うことができるからです。


抱影の仏教美術への関心は、京都・奈良から吉野・高野まで巡歴した中学生時代にさかのぼるので、天文趣味と同じぐらい年季が入っています。しかし、星の和名の収集に続いて、星と仏教美術との関係に取り組むようになったのは、戦後もずっと経ってからのことのようです。星の翁も、齢を重ねるとともに、自然と仏臭いものに惹かれたのでしょうか。今の私もちょっとそんな気分かもしれません。

ちなみに、この本の「あとがき」は、抱影の実弟・大仏次郎が書いています。抱影の本に彼が文章を寄せたのは、これが最初で最後だそうです。二人とも、このテーマに何か感じるものがあったのでしょう。

   ★

と言いつつも、私はこの本を積ん読状態のまま、ずっと放置していました(パラパラ見た程度)。今日、改めてページを開いたのですが、先日の宿曜経の話題をはじめ、これはもうちょっと早く読んでおけば良かったなあ…と思いました。

とりあえず、以下目次です。

はしがき
1 北辰妙見菩薩巡礼
2 薬師寺本尊台座の四神像
3 朝鮮陵墓の四神像
4 七星剣の星文考
5 求聞持〔ぐもんじ〕虚空蔵と明星
6 法隆寺の星曼荼羅
7 インドの九曜と星宿
8 聖徳太子絵伝の火星
9 南極老人星
10 道教美術の星辰像
11 海神天妃媽祖〔まそ〕
12 璿璣〔せんき〕と天文玉器
13 古代インド二十八宿名考
14 敦煌の古星図
あとがき 

さて、この本の中で、抱影がもっとも紙幅を割いているモノについて、これから述べようと思いますが、これは十分もったいぶる価値があるので、次回にまわします。