「アルビレオ」 という雑誌があった ― 2012年08月07日 21時34分01秒
『夏帽子』 が出た1994年。宮沢賢治だけをテーマにした「アルビレオ」という、ちょっと変わった雑誌が創刊されました。副題は「賢治といっしょに森羅万象を楽しむ」。
(雑誌保護用のカバーがかけてあります。)
賢治の地元の岩手放送がお金を出して始めた雑誌です。
当時はまだ山一証券が破たんする前で、バブルの残照が世の中をほのかに照らしており、企業にも、まだこういう趣味的な雑誌を出すだけの余裕があったのでしょう。
(創刊特集は「メモ・フローラ 賢治の夢見た花々」)
(1993年にCD「宮澤賢治―メンタル・サウンド・スケッチ―星めぐりの歌」を出した細野晴臣氏へのインタビュー。)
(細野氏も、中沢新一氏も、今見るとずいぶん若いですね。否応なく時の流れを感じます。)
しかし、そうした余裕も長くは続かず、この雑誌はわずか3号で姿を消しました。文字通りの「3号雑誌」です。残念といえば残念。
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賢治受容史のあだ花ともいうべき、この雑誌の主要記事を、後のために表紙から書き抜いておきます。
■創刊号…<創刊特集 メモ・フローラ 賢治の夢みた花々>、<ロングインタビュー 細野晴臣「星めぐりの歌」>、<ますむらひろし・小岩井農場でアルビレオを観測する「みかん色の宝石が回る夜」>
■第2号…<新連載 イーハトーブ幻想図鑑 細川剛=撮影>、<特集 シルクロード幻想 金子民雄他>、<インタビュー 中沢新一「はじまりの宮沢賢治」>、<ますむらひろし「胡桃化石の中は賢治の向う岸」>
■第3号…<ロングインタビュー 武田鉄也(賢治を語る)>、<特集 賢治TOKIOを行く 宮沢賢治「東京歌集」 賢治の上京 ルポ・鶯谷から菊坂へ 福島泰樹他>、<アルビレオ探検隊 ますむらひろし>、<イーハトーブ幻語図鑑 細川剛=写真>
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さて、この雑誌のことを突然思い出したのは他でもありません。その最終号には「幻の第4号」として、次のような予告が載っているからです。
当時の長野まゆみさんが、賢治のことをどう評価し、何を語ろうとしていたのか。
とても気になりますが、その内容は幻とともに消え去り、今や知る由もありません。
…でもやっぱり気になります。
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