実験の時間(5)…英国編(その2)2012年09月03日 21時59分28秒



表にも裏にも説明がないので、どこの学校かは不明。
厳密にはイギリスかどうかも分からないのですが、まあ十中八九、イギリスのプレパラトリー・スクールの光景でしょう。(preparatory schoolは、英米で意味が違う言葉のひとつで、イギリスでは上流階級の子弟向けの、全寮制私立小学校を意味するらしいです。)
一時流行ったホワイト・ボーダータイプ(白枠付き写真)の絵葉書で、時代的には1920年頃。

   ★

それにしても、こまっしゃくれているというか、何というか…。
日本だと、昔も今も<林檎のような頬っぺたをした、純朴な少年>が好まれると思いますが(今はちょっと違いますかね?)、ここに写っている少年たちは、いずれも冷たいビスク細工のようで、特に右端の少年など、「繊細な感情描写と鋭い警句で知られる某人気作家」と言っても、そのまま通るほど怜悧な風貌です。

…と、つい人物に目が向きますが、ここでは実験にも注目せねばなりません。
上皿天秤、フラスコ、ビーカー、漏斗などを見る限り、何か化学実験の最中のようですが、手前に写っているメトロノームはなんのためでしょうか。各机に置かれた器具に統一感がないのは、ひょっとしたら実際の実験場面ではなくて、一種の演出写真であるせいかもしれません。

コメント

_ S.U ― 2012年09月04日 07時38分48秒

これはいろんな器具が並んでいますね。(そういや昨日はドラえもんの生誕マイナス100周年だったそうですね)

 メトロノームの隣にある天秤は、物理天秤ですが、これはなぜ「物理天秤」と呼ばれるのでしょうか。また、学校の実験では何に使うのでしょうか。(「なんであんたがそんなこと訊くの」と言わないで下さい)私は学校で一度も使ったことがありません。今は電子天秤があるのでどちらみち必要ありません。思いつく用途としては、気体の密度測定とか、種々の質量保存、慣性質量と重力質量の関係、実体振り子くらいです。化学実験はすべて上皿天秤か台量りで足りたように思います。

 小学生レベルにふさわしい物理天秤のもっともな用途が写真から窺えないので、この写真は演出写真だと思います。この学校に上皿天秤がなかったのなら話は別ですが。

 メトロノームの用途は何でしょうね。私が学校にいた頃も理科準備室にあったように思います。単に重りまでの距離によって周期が変わることのディスプレイには使われたと思いますが、他の用途は知りません。秒針のついた時計が貴重だった昔は、ストップウォッチの代用だったということもあるかもしれません。

_ 玉青 ― 2012年09月04日 21時32分46秒

>「物理天秤」

おお、皿があるからといって、何でも「上皿天秤」で片付けてはいけませんね。面目ありません。
物理実験の器具についてS.Uさんに説くというのも、何だか妙なものですが、カタログをチェックしてみたら、上皿天秤と物理天秤の最大の違いは精度(目量)の差のようです。たとえば、同じ秤量200gの秤でも、上皿式だと目量200~100mg程度ですが、物理天秤だとライダー目盛の操作で、0.1㎎ぐらいまでいけるらしいです。気体の密度や質量の測定など、物理関係の実験だと、それぐらいのオーダーがないといかんということでしょうか。

>メトロノームの用途…ストップウォッチの代用

これまた戦前の理科教材カタログを見ると、確かにメトロノームはストップウォッチと並んで「雑測定器具」の項に出てきて、「本器ハ物理学計算用トシテ製作セラレタル拍子器ニシテ1分ヲ分割シテ調節ニヨリ60より210迄ノ打数ヲ調ベ得ルモノナリ」と解説されています。何かタイミングをとる必要のある実験で使ったのだと思いますが、うーん、どんな実験でしょうねえ。

_ S.U ― 2012年09月05日 07時07分27秒

>上皿天秤と物理天秤
 早速の調査をありがとうございます。一般向け(学校向け?)カタログ商品においても精度の差は歴然ですね。
 物理実験の器具について、私が人様にお尋ねすると物理実験屋の名折れになるところかもしれませんが、相手がこと理科室の達人たる玉青さんの場合に限って、いっこう名折れにはならないのでした。

 では、小学生にもできそうな実験を紹介させていただきます。

 物理天秤-空気の密度測定: 変形の小さい耐圧容器(現代では炭酸飲料用のペットボトルも可)に空気を押し込んだときと、加圧ぶんの空気を逃がしたときの質量差を測定する。質量差に対応するのは逃げた空気で、これはメスシリンダーで水上置換で体積を測定する。1気圧の空気は100mlで130mgくらいなので、物理天秤なら正確に測定できるはず。

メトロノーム=斜面を転がる物体の運動:大きめの机を少し傾けて斜面を作り、そこに碁盤の目くらいの方眼紙を貼っておく。そこに金属球をゆっくりと転がし、メトロノームを聞きながら、時間ごとの位置を記録(大勢の目で記憶?)する。水平方向には一定の速さ、勾配方向には一定の加速があることがわかる。

_ 玉青 ― 2012年09月05日 22時56分46秒

おお、実験器具を見て、それに相応しい実験を考える…!
いささか倒錯の気味なしとしませんが(笑)、これぞ「理科室道」免許皆伝への道かもしれませんね。
小生、いまだ道半ばにも至らざる未熟者なれば、今後も精進を重ねる所存ですので、ご指南よろしくお願いいたします。

_ S.U ― 2012年09月06日 06時46分01秒

>相応しい実験を考える…!いささか倒錯の気味
 (笑) 私が考え出した実験ではなく以前からある実験に器具を当てはめただけですので、よしとして下さい。

 英国の高級な学校と違って(貴族が金持ちとは限らないのでしょうが)、日本の田舎の小学校にあるものは限られていましたし、かつては数百円の消耗品費すら簡単に出るものではなかったので、入手できる範囲の物でできる実験を考えるのも「理科室道」の伝統には違いないでしょう。

_ 玉青 ― 2012年09月07日 05時57分46秒

いえいえ、良しとするも何も、こういう試みはどんどん積極的にされるといいんじゃないでしょうか。考えているうちに、思いがけない研究テーマが突如浮かんだりして、生徒・先生いずれにとっても、面白い頭の体操になりそうです。

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