天地明察アゲイン…渋川春海の時代の望遠鏡を考える(3)2012年11月08日 19時03分54秒

何だか書いているうちに記事が長くなったので、3つに分割して、一昨日にさかのぼってアップすることにします(現在は11月10日です)。

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17世紀、江戸時代の幕開けとともに日本にも望遠鏡が入ってきましたが、それはどんな姿をしていたか?

前掲の渡辺敏夫氏『近世日本天文学史』の第5章は、「望遠鏡の歴史」に当てられています。その実例を見ると、1613年にイギリス東インド会社から派遣されたジョン・セーリスが家康に献上した望遠鏡は「銀台鍍金の筒入望遠鏡」であり、1641年に家光が「蘭人貢物」として受け取ったのは「千里鏡、金装千里鏡」でした。「金装」とわざわざ断っているのは、金メッキを施した立派な献上用望遠鏡のほかに、グレードの落ちる一般用望遠鏡(紙製あるいは木製)も同時に受け取ったからでしょう。いずれも現物は残っていません。

現存する日本最古の望遠鏡は、中村士氏が調査を行った、徳川美術館所蔵のもので、尾張藩初代藩主・徳川義直(1600-1650)所用と伝えられるものです。
これはヨーロッパ出来の品ではなく、長崎あるいは中国製のものと考えられています。外観は、4段伸縮・総長1.2メートルの手持ち式です。光学系はガリレオ式(凹凸レンズ各1枚)ではなく、シルレ式(凸レンズ4枚構成)を採用し、倍率は4倍。鏡筒は紙製漆塗り、いわゆる一閑張りで仕上げられ、部分的にべっ甲や象牙を使用した豪華なものです。


(↑小さい画像で恐縮ですが、これが日本最古の望遠鏡。
出典:http://www.shikoku-np.co.jp/national/life_topic/article.aspx?id=20050811000470

(この項つづく)

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