「不器用なりに頑張った」…ガリレオ望遠鏡のペーパークラフト2012年11月19日 21時44分02秒

先日、渋川春海の望遠鏡について書きながら、脳裏をかすめたのはガリレオの望遠鏡のこと。世の中、実際に見てみないと分からないことは多いので、春海の望遠鏡はともかく、ガリレオの望遠鏡を覗いてみたいと思いました。

「そういえば、2009年の世界天文年のとき、たしか精密復元レプリカが売りに出たなあ…」と思い出して、今改めて見たら当時の価格は17万円なにがし。合掌するしかない値段ですが、仮にお金が山のようにあったとしても、とっくに完売しているので、今では入手不能です。

もっと手軽なものはないかな?と思って探すと、学研の「大人の科学マガジン」の1冊として、やっぱり2009年に出たのがありました。が、これも版元品切れのようです。アマゾンには中古が出ていますが、定価2300円のところ、プレミアがついて4500円ぐらいになっていて、なんとなく釈然としません。


さらに海外に手を広げて探したら、ドイツのSun Watch Verlag というところから、Das Historische Galilei-Teleskop という商品が出ているのを見つけました。これなら送料を入れても1800円なので、これだと思い、そそくさと注文。


それが昨日(日曜日)届いたので、昨日は午後から工作に精を出していましたが、これがけっこう難儀しました。
学研の品と違って、プラ部品は一切なく、ガラスのレンズ以外はすべて紙製という渋い品なので、学研というよりも、昔の小学館の学習雑誌の付録を作るような感覚です。

不器用な私には切った貼っただけでも大変なのですが、さらに問題は付属の説明書。現物が届く前は、「子どもでも作れるように、詳細な図解があるに違いない。ことによったら、英語も併記されているんじゃないか」と甘いことを考えていたのですが、実物を見たら、説明書には図がほとんどなくて字ばかりですし、表記もドイツ語のみ。かろうじて文中の「A1」とか「C8」とかいうパーツ番号は分かるので、「こういう順番に台紙から切り抜いて組み立てるんだな」ということは、おぼろげながら分かるのですが、細部の仕上げがよく分からず、しばし手を止めて黙考。

「うーん、おかしいなあ…これだと理屈からして、完成写真のようになるはずはないんだがなあ…」etc、ブツブツ言いながら、結局、勝手に部品に切れ込みを入れて折り曲げたり、台紙の余白から、新たな部品を切り出したりして、何とか完成させました。(不器用さは想像力で補いました。それに所詮は紙の筒の両端に2枚のレンズを取り付けるだけですから、細部はどうとでもなります。)


これが完成品。どうです、見た目は結構それっぽいでしょう。
ただ、当然のことながら、この品は厳密な意味でのガリレオ望遠鏡の復元品ではありません。光学系はたしかに凸レンズと凹レンズを組み合わせたガリレオ式で、外観はガリレオの「20倍望遠鏡」をイメージしているようですが、その性能はむしろ彼の「14倍望遠鏡」に近いものです(が、以下のように結構違いが目立ちます)。
まあ、オリジナルとまったく同等ではないにしろ、ガリレオが覗き見た世界を想像するには、この程度でも十分です。

(上:14倍望遠鏡、下:20倍望遠鏡)

■主なスペック(ガリレオの「14倍望遠鏡」/今回組み立てたレプリカ)。
○対物レンズ径  51ミリ/42ミリ
○同有効径 26ミリ/25ミリ
○対物レンズ焦点距離 1330ミリ/780ミリ
○接眼レンズ焦点距離 94ミリ/65ミリ 
○倍率 14倍/12倍

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昨夜のファーストライトは、西の地平線近くに傾いた月齢11.2の月でした。
視野が異常に狭いので、月を導入するのもひと苦労です。
月全体が視野にすっぽり収まるので、実視界はまだしも、見かけ視界がお話しにならないぐらい狭いので、本当に「葦の髄から天井を覗く」ような塩梅です。これで天界のメッセージを受け取ったガリレオは、それだけでも偉大だと素直に思いました。

肝心の像は、口径絞りと長焦点のおかげか、意外なほどシャープです。紙筒の望遠鏡でシャープな見え味というのは、予想していませんでしたが、12倍であれだけくっきりクレーターが見えれば、まあシャープといっていいのでしょう。ガリレオの有名な月スケッチよりも、もっと見える感じです。

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ともあれ、こうして素朴なガリレオ体験を済ませました。
この望遠鏡を使って、さらに天界探索をする気力はありませんが(セカンドライトは未定です)、ほんのちょっとだけ17世紀の天文家の心が分かった気がするので、今回はまあ良しとしましょう。