冬の京都へ(前編)…島津創業記念館再訪2013年01月28日 20時49分38秒

今回の小旅行の行き先は京都でした。
主目的は寺社参拝というオーソドックスな旅で、しかも連れがいたので、理科趣味的色彩は薄い旅でしたが、合間を縫って島津創業記念館を再訪したので、そのことをメモしておきます。

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一昨年訪問した折(http://mononoke.asablo.jp/blog/2011/10/21/6165208)は、島津の旧本社ビルが改築中で、その優美な姿を見ることができませんでしたが、今回は十分楽しむことができました。

(今回はカメラを持参しなかったので、携帯で撮った小さな写真で雰囲気だけお伝えします。)


かつての科学技術の牙城も、現在は「FORTUNE GARDEN KYOTO(フォーチュン・ガーデン・キョウト)」というレストラン&ウェディング施設に衣替えしており、古き科学の香りを探るべくもありませんが、その分、部外者が気軽にモダン建築の妙を味わえるようになったのは喜ぶべきことかもしれません。ちなみに、記念館の方に伺った話によると、敷地と建物は依然として島津製作所の所有で、それをフォーチュン・ガーデンに賃貸ししているのだそうです。

(記念館でもらったフォーチュン・ガーデンのパンフレットから。中には重厚なムードのバーもあるそうで、これはちょっと行ってみたい。)

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さて、肝心の記念館の方ですが、展示内容はほぼ同じでも、前回より心を落ち着けてじっくり見て回ることができたので、とてもよかったです。何事も繰り返し見ることが大事だと実感しました。




今回嬉しかったのは、前回はなかった18ページの紹介パンフができていたことです(100円也)。いずれ、完全な収蔵品目録が作られることを期待したいですが、その一部にしろ、こうして解説付きのきれいな印刷で見られるのは嬉しいことです。


前回はあまり見ずに通り過ぎてしまった、グレゴリー式反射望遠鏡。各地の学校から寄贈された理科機器の一部として展示してありました。メモ代わりに撮った写真が、メモの役割を果たさなかったのが残念ですが、刻印されている名称はオランダのメーカーのもので、寄贈元は(たぶん京都の)大谷高校だったと思います。


先日、「ジョバンニが見た世界」の連載の中で、グレゴリー式望遠鏡を取り上げたので、特に印象深く思ったということもありますが、それ以上に気になるのは、この望遠鏡の来歴です。大谷高校はその前身をたどっても、明治8年(1875)の開学であり、この望遠鏡はそれよりもずっと古いもののはずですから、なぜこれが同校に伝わったかは、ちょっとしたミステリー。

関係者が学校に寄贈したものだとしても、大谷高校は浄土真宗大谷派(東本願寺)が母体の仏教系の学校ですから、お寺さん関係の人で、こんなハイカラなものを持っている人がいたのかどうか…?

昭和の時代に入れば、浄土真宗木辺派の管長を務める傍ら、鏡面研磨の達人として名を馳せた木辺成麿氏のような傑物や、あるいは浄土真宗本願寺派の僧籍にありながら、地球儀製作を業とするようになった渡辺雲晴氏(渡辺教具初代)のような異才もありますが、江戸・明治の昔にも、天文趣味を追究した僧侶がいたとすると、なんだか愉快な気分になります。

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島津創業記念館を見た後は、これまた以前からこだわっている、戦前のコンクリート校舎の実例を見るために、旧・京都市立明倫小学校を訪ねました。そのことも書いておこうと思いますが、ちょっと文章が長くなったので、ここで記事を割ります。

(この項つづく)