書斎プチ改造(2)2013年03月16日 13時41分32秒

(ぼちぼち再開です。以下、前々回のつづき)

そんな思いを込めて迎えたわが家のタイプライター。


アメリカのスミス・コロナ社の「サイレント・ポータブル」。1930年代に売り出された静音設計のタイプライターです。静音といっても、標準機に比べれば…の話で、やっぱり音はパチパチと派手にします。また、そうでなければタイプライターの魅力は半減でしょう。

パトリック・ムーア卿の愛機に比べると、時代がちょっと若い分、よりモダンな印象です。この曲線的な造形は、おそらくアール・デコの影響を受けているのでしょう。つややかな黒のボディも相まって、いっそ肉感的な美しさを感じます。


キートップの表情もなかなか…。

   ★

このタイプライターを迎えるに当たって、最大の障壁はスペースの問題、すなわち今あるPCと共存できるかどうかでした。じっと腕組みをして眺めているうちに、「PCの上が空いているじゃないか」とふと気づいて、ラックを自作して、2段重ねにすることにしました。


たまたま本棚の棚板が1枚余っていたので、それに足を付けたら、ちょうど良いサイズでした。


PCはキャスター付きの板に乗っているので、簡単に引き出すことができます。
…と、やたらに自画自賛していますが、単なるゴミ屋敷から脱する一歩を踏み出したことで、若干気分が高揚しているのでしょう。

コメント

_ S.U ― 2013年03月16日 18時57分06秒

キーに風格のあるいいタイプライターですね。現代の事務用品のイメージではありませんね。
 フォントはEliteですか?消耗品(インクリボン、blanco修正紙)は、今でも入手可能なのでしょうか。できれば今度、文字も見せて下さい。

_ 玉青 ― 2013年03月17日 16時58分38秒

いやあ、実はきちんとタイプライターに触るのは初めてなので、使い方がよく分からないんですよ。でも、適当に打ったのを記事に上げておきました。フォントも今一つ何ですが、「Tenmon-Kogan」の12文字がきっちり1インチ幅に収まっているので、おそらくEliteなのでしょう。消耗品は今でもタイプライター専門店があって、そこで何とか手に入るようですよ。

思い起こせば私が学部生のころ、先輩の院生たちは、外国に手紙を出すのに、研究室のオンボロタイプライター(手動式)を苦労しながらパチパチ叩いていました。当時はすでにワープロがありましたから、ワープロで打てばいいのに…と思いましたが、先輩から「いや、正式な手紙はタイプで打つものだ」と諭されました。たぶん、手紙は万年筆で書くのが礼儀…というのと同じ感覚だったのでしょう。
思うに、当時は海の向こうでもPC&プリンターというスタイルに(あるいは、それも飛び越えてEメールに)急速に移行しつつあり、伝統をかたくなに墨守していたのは、日本の片隅の学生ぐらいだったかもしれませんが、その「牙城」も、私らより下の学年になるとあっけなく崩壊し、もはやあの老タイプライターに触れる者はほとんどいなくなりました。
これもまた、ささやかな歴史の1ページと言えるかも。

_ S.U ― 2013年03月18日 05時48分04秒

アメリカ製のお値打ち物のようですが、打たれた文字はなつかしく親しみ深いものに感じます。

 頑固な先輩学生さんの貴重な証言をありがとうございます。そういう時代があったのですね。思うに、1980年代の一時期には、ワープロは送り穴の開いた連続紙、英文の手紙は専用のレター用紙と決まっていて、それに縛られるとタイプライターを使わざるを得ない時代があったかもしれません。仕事場や研究室には電動式があったと思うので、当時は手動式はもう下書きか私信くらいにしか使われていなかったのではないかと思います(私の場合はそうでした)。修正紙以外にも手動タイプライター特有の「重ね打ち文字合成」とか「右揃え」とかのウラ技があったように思いますが、忘れました。

 それで、もっと昔のことを思い出したのですが、私が小学生の頃、雑誌の懸賞の賞品の2等くらいにタイプライターがよく掲げられていました。当時の田舎の小学生には、タイプライターを何に使うのか、どういうしくみなのかほとんどイメージがなく、何でこんなものが賞品なのかさっぱりわかりませんでした。1等はたいてい天体望遠鏡か家電製品か何かで理解のできる物でした。都会の小中学生にタイプライターが流行っているのかとも考えましたが、その広告や使用法などが雑誌に出ていない状況からそうとも思えませんでした。英文を作成するための機械であることは理解していましたが、何でそんなものを小中学生が使うものでしょうか。今でも不思議です。玉青さんは、こんな懸賞のご記憶はありませんか?

_ 玉青 ― 2013年03月18日 21時59分26秒

>雑誌の懸賞の賞品の2等くらいにタイプライター

個人的な経験の範囲では、どうも記憶にありません。微妙な年代差のせいかもしれませんが、まあ、鈍な子どもだったので、あまり懸賞に目が向いていなかったというのも大きいでしょう(笑)。

リアルタイムの記憶はおぼつかないのですが、思うに当時はタイプ教室があちこちにあって、一種の習い事として通う人も多かった時代ではないでしょうか。何に使うかはさておき、とりあえず身に付けておいて損はない技能…みたいな受け止め方が世間の側にもあったように思います。という風に考えると、まさに今の(orちょっと前の?)パソコンに近い存在だったのかもしれず、そうなると懸賞品の定番になっていたのも分かる気がします。当時は、タイプライターに憧れて、「英語の勉強にもなるんだよ!」とかなんとか理由をつけて、親にねだった少年少女もいたんじゃないでしょうかね。

_ S.U ― 2013年03月19日 07時29分00秒

>あまり懸賞に目が向いていなかった
 お子さんの時は物品に淡泊でいらっしゃいましたか。そうでなければ、わずかの年齢差が生死を分けた(?)こともあったかもしれません(笑)。

>タイプ教室
 確かにこれは地方にもありました。趣味と実益を兼ねたカッコいい技能と感じていた少年少女もいたかもしれませんね。でも、そういうのは当時の言葉で「ばりばりの職業婦人(あるいはBG)」をめざす人のためのものと勝手に思っていた私からは遠い世界でした。

 ところで、検索で当時の貴重な証拠を保管されている方を見つけました。

「 60年代、楽しい夏休み」
http://homepage2.nifty.com/mtomisan/page084.html
の「楽しい夏休み6」の2枚目と最後の画像の下半分をご覧下さい。
2枚目: ボルガ戦車やウィンチェスター銃といっしょにタイプライターが並んでいるのは圧巻でしょう?
最後の画像: 中央にローラーがあって普通とは違う印字方式に見えますが、これは正式のタイプライターなのでしょうか?

_ 玉青 ― 2013年03月19日 22時50分19秒

あ、タイプライター、S.Uさんの記憶のままですね!

画像をぐいと拡大すると、「キーをたたいて文字がうてる、ほんものとおなじしくみの新しいタイプライター」と読めます。「ほんものとおなじ」とある以上、これは「ほんもの」ではないのでしょう。で、調べてみると、これは子ども用のトイ・タイプライターで、外見が酷似した品がアンティーク雑貨の店で売られていました。

http://www.artfesta.net/zakka/shopping/detail/1330627462.html
http://myday.exblog.jp/9608725/

前者のリンク先はイギリス製とのことですが、ひょっとしたらこの景品の品は、それをパクったバッタ品か、あるいはそもそもイギリスで売られていたのが、日本からの輸出品であった可能性もあるのではないでしょうか。

それにしても、こういう品が存在したこと自体、子どもたちがタイプライターに憧れの目を向けていた何よりの証拠だと思います。

_ S.U ― 2013年03月20日 07時04分27秒

このタイプライターはローラーを回して「キーをたたく」と文字が打てるもののようですね。「ぜんぜんほんものと同じしくみじゃないじゃん」と思いますが、当時の少年少女は活字風の英数字が得られればそれでかなり満足したことでしょう。値段的にも、ほんもののタイプライターが玩具のウィンチェスター銃や小口径の天体望遠鏡の後塵を拝するはずはないので、少なくとも2等以下の賞品がほんものであるはずはないです。現在となれば、こちらのほうがレアものかもしれません。

 そういえば、1990年代には子ども用のワープロが出てました。今でもあるかどうかは知りません。今、小学生の子どもに「ほんもの」のスマホを使わせてよいものかどうかが問題になっています。少年少女が一応の満足を得られる玩具のスマホがなければ本物を使うのもやむを得ないのかもしれません。物の点でも子どもに住みにくい世の中になったのではないかと心配します。

_ 玉青 ― 2013年03月20日 16時57分39秒

>ぜんぜんほんものと同じしくみじゃないじゃん

あはは、本当ですね。
「印字ヘッドで紙に文字を打ち込む」ところがほんものと同じ…と言いたいんでしょうかね(なんだか「ウチのかみさんは女優の誰それにそっくりや。どっちも目ェがふたつ、鼻がひとつ、口がひとつや」というのと似た感じを受けます)。子ども相手にずいぶんアコギなことをするものですが、まあ、こういう書き方が許されたのも、それだけ時代が大らかだったのかも。今だったら消費者も「お上」も黙っていないでしょう。

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