日常を生きる2013年03月19日 22時52分28秒

暑さ寒さも彼岸まで。
ここ数日間、この言葉が日本中でいったいどれだけ繰り返されたことか。
今さら感はありますが、でもやっぱり何度でも繰り返したくなるフレーズです。
流行語大賞が1000年単位で選出されるものなら、間違いなく上位にノミネートされるフレーズだと思います。

年度末は仕事も忙しく、今日もくたびれた心を抱えて家路につきました。
が、ふと気が付けば、おぼろに霞む半月に照らされて、桜のつぼみは夜目にもはっきりとピンクが差していますし、夜気には様々な植物の匂いが混じり、どうしようもなく春だなあ…と思いました。

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このあいだ、離ればなれの男女が、星を見上げて思いを通わせる、可愛らしい古絵葉書を購入しました。星と人との関わりが感じられる、なかなか良い題材だと思いましたし、1940年代のカルチャーが色濃く出たデザインも面白いと思ったのです。届くのがふつうより遅かったので心配していましたが、昨日無事届いてホッと一安心。

でも、鼻歌まじりに封筒を開けたら、中から出てきたのは「マサチューセッツ州ナンタケット島、サンカティヘッド・ゴルフクラブのウォーターハザード」の古絵葉書でした。一面草ぼうぼうの中に、池らしきものがチラッと見える絵柄です。

「え、なんで?」と思いました。
「なんで、よりによってウォーターハザードの絵葉書が?」という意外感と、「そもそも、こんなものを絵葉書にする意味があるのか?」という不審の思いが頭の中をぐるぐる。.

アメリカの売り手に連絡すると、すぐに慇懃な返事が返ってきました。

「たいへん申し訳ございませんでした。何せ当店では常時7万点以上の絵葉書をオークションストアに出しており、毎週500枚から600枚の絵葉書を、わずか5人のスタッフで発送しているものですから、発送ミスもまま起きるような次第でして、不手際につきましては重ね重ねお詫びいたします。幸いご注文の絵葉書は在庫がございますので、さっそく本日発送させていただきたく、またお手数ながら誤配のカードをご返送いただければ、ただちに送料は返金いたしますので…」云々。

正しい絵葉書が送られてくるそうですから、別に問題はないし、たとえ送られてこなかったとしても、所詮は安絵葉書1枚ですから、そんなに「損した感」はありません。

でも何と言ったらいいのか、1920年代アメリカの片隅にあったゴルフ場の、そのまた片隅のウォーターハザードの景色や、7万点以上の在庫を抱えた古絵葉書ショップの店内、ささいなクレームに迅速に対応する店主の律儀さ…そういったものが一塊となって、私はそこに言い知れぬ倦怠感を覚えたのです。我々の「日常」を構成するものが何であるのか、それを目の前にグイと突き出されたような…と言いますか。

なんだか、どうでもいいことを長々と書きましたが、こんなことを感じたり、それをわざわざ文章にするのも、きっと春だからでしょう。