東大発ヴンダーの過去・現在・未来2013年04月02日 06時18分26秒

ヴンダー好きの人、特に理科室系ヴンダー好きの人にとって、東大総合研究博物館の小石川分館は、まさに聖地と呼ぶべき場所でした。それはひとえに、同館で2006年から常設展として開催されていた「驚異の部屋-Chamber of Curiosities」展の力によります。この展示空間が日本のヴンダー好きに与えた影響は、いくら強調しても強調しすぎということはないでしょう。

私が小石川を訪れたのはいつも雨の日でした。
静謐で、冷やかで、それでいて華やかなモノたちの祝宴。
このまま何ひとつ変わることなく、未来永劫続くかと思われた同展も、残念ながら昨年9月をもってついに終了となりました。

それを知って、ヴンダー好きのひとりとして、実に空虚な感じ、寄る辺ない感じを味わったのですが、さすがは東大、さすがは西野嘉章館長。新たなヴンダーの種は首都のど真ん中に早々とまかれており、それが先月ついに芽を吹きました。東京駅前のJPタワー(旧東京中央郵便局)に、3月21日にオープンした「学術文化総合ミュージアム インターメディアテク」がそれです。


インターメディアテク公式サイト
 
http://www.intermediatheque.jp/

上記サイトによれば、その内部空間は

「レトロモダンの雰囲気を醸し出す空間演出をデザインの基調とし〔…〕21世紀の感受性に働きかける折衷主義的様式美——仮称「レトロ・フュチュリズム」——の実現を企図」

しており、そこに展示されるのは、

「総合研究博物館の研究部ならびに資料部17部門の管理下にある自然史・文化史の学術標本群である。ミンククジラ、キリン、オキゴンドウ、アカシカ、アシカの現生動物、さらには幻の絶滅巨鳥エピオルニス(通称象鳥)などの大型骨格については、本展示が最初のお披露目の場となる。また、(旧)医学部旧蔵の動物骨格標本と教育用掛図も、本格的な公開は今回が初めてとなる。〔…〕

また、学外の機関・団体からのコレクションの寄託ないし貸与もいくつか実現した。主なものとして、財団法人山階鳥類研究所の所蔵する本剥製標本(多くは昭和天皇旧蔵品)、江上波夫収集の西アジア考古資料コレクション、岐阜の老田野鳥館旧蔵の鳥類・動物標本、江田茂コレクションの大型昆虫標本、仲威雄収集の古代貨幣コレクション、奄美の原野農芸博物館旧蔵の上記マチカネワニを挙げることができる。」


…とあって、本郷本館と小石川分館でこれまで行われてきた展覧会の精髄を結集した、実に豪華な展示であるようです。

ただし、その分きゅうくつな部分も増えて、小石川ではバンバン写真も撮り放題でしたが、今度はそういうわけにはいかず、ネット上での露出度も低かったのですが、以下の記事を見て、ようやく館内の様子がほの見えてきました。

JDN Station:学術文化施設「インターメディアテク」オープン
 http://www.japandesign.ne.jp/station/articles/view/178

元郵便局の集配業務に使われていた、長さ66メートル、幅12メートルの細長いフロアに、装飾的な木製キャビネットを作り付け、骨あり、蟲あり、剥製あり、人工物ありの、奇態なモノ尽くしの空間を作り上げている模様です。

長大な単一空間は、博物館としては使いづらいと思いますが、見ようによっては昔の王宮の間のようでもあり、これぞヴンダーカンマーならぬ、新たな「ヴンダーパラスト(驚異宮)」なのかもしれません。

何はともあれ交通至便の場所ですし、こんど東京に行く際は、真っ先に訪ねてみようと思います。