続・東大発ヴンダーの過去・現在・未来…西野嘉章氏の軌跡をたどる(4)2013年04月27日 21時33分16秒

西野氏の活動は、その後アート路線に大きく振れます。すなわち昨日勝手に命名したところの「裏芸」が前面に出てきたわけです。(とはいえ、西野氏の本業は美術史学ですから、氏の内的必然としては、こっちの方が「表芸」なのかもしれませんが。)

そのシンボルが、2002年12月から2003年3月まで、小石川分館で行われたミクロコスモグラフィア:マーク・ダイオンの『驚異の部屋』」展です。
これは、その後、小石川分館の常設展となった「驚異の部屋展」の直接の前身であり、「驚異の部屋」をテーマにした最初の大規模展として、日本ヴンダーカンマー史におけるく記念碑的展覧会と言ってもよいでしょう。

(ミクロコスモグラフィア図録)

「ミクロコスモグラフィア」の場内風景は、一見したところ「東京大学展」とあまり変わらないように見えます。並んでいるのは、やっぱり東大が所蔵する学術標本群でしたし、その基本コンセプトも、タイトル通りヴンダーカンマーでしたから。

(図録より。水圏、気圏、地上圏、人間圏…等と名付けられた8つの展示室のうち「地上圏」の展示風景)

しかし、「学術」を軸にした展示と美術展とでは、その性格がまったく異なります。

ここに名前が出てきた、マーク・ダイオンとは、そもそも何者か?
とりあえず英語版ウィキペディア(http://en.wikipedia.org/wiki/Mark_Dion)から引用します(ただし、この記事はウィキの伝記事項の特筆性に関するガイドラインに適合しないことが指摘されています)。

マーク・ダイオン(Mark Dion 1961年8月28日生まれ)はアメリカ人芸術家。インスタレーション作品に科学的体裁を取り入れたことで有名。テート・ギャラリー、ニューヨーク近代美術館、さらにPBS(アメリカ公共放送サービス)の番組「Art21」等、国際的な場で作品展を開催。マンハッタンにあるコロンビア大学視覚芸術学部教員。ラリー・アルドリッチ財団第9回年間賞(2001)をはじめ受賞歴多数。ニューヨークおよびペンシルバニアに在住し活動中。

…というわけで、彼は純然たるアーティストです。


(同、標本壜に収まったダイオンの写真)

「ミクロコスモグラフィア」は、その展示全体が1つの美術作品であり、そこは何かをお勉強する場ではなく、感じとる場でした。そのため、個々の展示物にはいっさい説明がなく、見る人によっては、一種の分かりにくさがあったと思いますが、その点に自由な風通しの良さを感じた人も一方にはいるでしょう。

(この項つづく)