続 『少年天文読本』2013年07月12日 20時10分39秒

(昨日のつづき)

初版の扉絵は、また新版と違っていて、こんな絵になっています。


山中の不思議な天文台(構造的には無理がありますが)に集う4人。


左端のかっぷくの良い人物はヴィルマン先生で、その説明を熱心に聞いているのは、オットー、エドゥアルト、リヒャルトの3名の生徒たち。この本は、彼ら4人が会話をしながら、「第一夜」から「第十夜」まで夜話形式でストーリーが進みます。

(「第三夜」冒頭)

(星座を学ぶ「第九夜」)

内容は、上のサンプルページからも分かるように、オーソドックスな天文入門書なのでしょう(ドイツ語なので、内容は想像するしかありません)。
ただ、この本で「いいな」と思えるのは、ところどころに挿入されている砂目石版の挿図です。

(初版の表紙や、新版のタイトルページにもなった月夜の景色)

砂目石版というのは、文字通りザラッとした砂目が版面全体に散った、ややもすると雑な感じを与えがちな技法ですが、この本の挿絵には、むしろ非常に繊細な印象を受けます。



流星雨↑と月面図↓(全体と部分拡大)



どうでしょうか。文章を読めないのが至極残念ですが、なかなかいい風情の天文授業ではないでしょうか。不思議な天文台で過ごす「天文の夕べ」。
いかにも足穂的であり、長野まゆみ的であり、クシー君的でもあります。

(巻末に挿入されている折込星図)

(ちょっとしつこいですが、新版と旧版のツーショット)