天体議会の世界…蚤〔ピュス〕ゲーム(1)2013年08月20日 21時53分54秒

昨日から平常勤務という方も多いでしょう。大人の夏休みは実にあっけないものです。
しかし、この夏休み向けの企画・「天体議会の世界」は、あちこち寄り道が多いせいで、まだまだ終わりそうにありません。

今日も寄り道のたぐいで、理科とも天文とも関係のないアイテムを取り上げますが、関係はなくとも、あの作品世界に分け入るカギとなりそうなものは、今後も進んで取り上げるつもりです。

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鉱石倶楽部に到着した二人が出会ったのは、いつもの店番役の大学生ではなしに、見慣れない少年でした。“ひょっとして自動人形〔オートマータ〕か?”と、二人がいぶかしむほど無表情で、しかも驚くほど整った顔だちをしたこの少年は、その後、全編を通じて重要な役柄を演じるのですが、それはまた後の話。

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とりあえず謎の少年に朝食の注文をして、二人は夏休み中のことをあれこれ話し込みます。

「云うなよ。おまけに突然、母〔バービイ〕がやって来て居座るものだから兄はどこかへ消えてしまうし、こっちは遊覧船に付き合わされる始末さ。」
「同情するよ。」
 水蓮は片方の眼で憐れむように銅貨を見た。(p.27)

以前もチラッと書いたように、久しぶりに銅貨と再会した水蓮は、この日大きな眼帯を左目にしていました。今朝から急に眼が腫れてきたのだといいます。

彼はさきほどから蚤〔ピュス〕という遊戯〔ゲーム〕をひとりで始めている。白磁〔ビスク〕のチップを容器めがけて指ではじき、チップの色や形で点を数えるのだが、眼帯をしているせいか、いつもより苦労していた。(同)

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ここに出てくる「蚤〔ピュス〕」というゲーム、なんとなくカッコいい感じがしたので、寄り道ついでに注目してみます。はじめは作者の創作かと思ったのですが、でも、探したら本当にありました。フランス語で「puce」と綴り、意味はたしかに「蚤、チップ」。

(1900年代初頭と思われる蚤ゲーム。外箱のデザインがかわいい)

「蚤ゲーム jeu de la puce」は、文中の説明通り、チップをはじいて点数を競う遊びで、ピュスには「チップのように飛ばす」という二重の意味が込められているのかも。
ただし、一口に「蚤ゲーム」といっても一種類ではなくて、そこにはいろいろなルールやデザインが認められます。(ちょうど日本の双六に、多種多様なデザインがあるのと同じでしょう。)

ここは鉱石倶楽部で水蓮が遊ぶのですから、いかにもそれらしい雰囲気のものが欲しいところ。いろいろ見て回って、最終的に上の品に決めました。その中身については、また次回。

(この項つづく)

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