天体議会の世界…十月の星図(2)2013年08月25日 20時27分55秒

ざっと雨が降り、今日はクーラー要らずの日でした。
自然の風に吹かれて気持ちよく昼寝をするという、最高の贅沢を満喫しました。

   ★

あまり『天体議会』とは関係ないのですが、「10月の星図」と聞いて思い出した星図帳があるので、この機会に載せておきます。


■Oswald Thomas,
 Atlas der Sternbilder: Mit figuralen Darstellungen von Richard Teschner
 『星座アトラス(リヒャルト・テシュナー作図)』
 Das Berglandbuch Verlag (Salzburg), 1945, 154p.

各月ごとの星図12種(星座絵と線描図の計24枚)、主要星座を中心とした部分星図32種(同64枚)、それに天の南極を中心とした南天星図(同2枚)を含む、星図帳としては至極完備したものです。

(しし座付近)

(2月の星座)

世に流布する星図は様々ですが、私は昔から黒地に白の星図が妙に好きで、このトーマスの星図帳も、黒(濃紺のようにも見えます)の地色と、ミントブルーの星座絵の対照がまことに爽やかで、一目見るなり気に入りました。出版年も新しいので、古星図のように馬鹿高いこともなく、ウィーンの古本屋さんの売値は、確か3千円ぐらいでした(もちろん買ったのはネットを通じてです)。

それにしても、あの時代によくこれだけの本が出たものです。
1945年といえばドイツ降伏の年ですが、著者の序文は1944年6月、ナチス統治下のウィーンで書かれています。そんな世情騒然たるオーストリアで、こんな美しい星の本が企画され、現に出版されたということは、当時の日本の状況を考えると夢のようです。(紙質の違いを見ただけでも、彼我の差は歴然としています。)


銅貨が眺めていた10月の空に対応する図。


「少年〔ガニュメデス〕の持つ水瓶から零れる水を、南の魚が飲んでいる。ひときわ煌く一等星は、魚の口〔フォーマルハウト〕」 …銅貨が見たのは、こんな絵柄ではなかったでしょうか。