白銀に輝く製図用具2013年09月03日 21時43分05秒

私の中学校時代(1970年代後半です)は、男子は技術科、女子は家庭科と分かれていました。その後、80年代に入って、技術・家庭科の男女共修が徐々に進み(ある年を境に、全国一斉にパッと変わったわけではないそうです)、今では男女ともに両方学んでいます。大変良いことだと思います。

それはともかく、私の製図に関する知識は、その中学時代に習ったことから一歩も進んでいないので、それについて何も書く資格はないのですが、ただ初めて製図セットを手にしたときの誇らしさはよく覚えていますし、製図道具自体、今でも美しいと思います。(美しいというよりも、素朴にカッコいいと思います。)

『天体議会』の主人公・水蓮は、「図面をひくことが得意で建築などに詳しい」そうですから、彼の面影を思い浮かべながら、ここで製図用具に目を向けることも、話の流れとしてそう不自然ではないでしょう。

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下は1920年代頃のドイツのE.O.Richter 社製の製図セット。


左端の見慣れない道具は、ドットラインを引くための専用の器具。

それ以外は、今でもありがちな普通の製図用具のように見えます。実際その通りなのですが、この事実は、現在の教育現場で使われている製図用具の主流が、「ドイツ式(独式)」であることを反映しています。ご覧のとおり、無駄な装飾を排した、直線主義的機能美がドイツ式製図用具の最大の特徴。


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しかし、ドイツ式が一般化する前は、日本でも「イギリス式(英式)」が主流でした。
下は以前も登場した、1950年代頃の日本製の製図セット。


当時はこうしたタイプが、むしろポピュラーでしたが、一見してドイツ式とは造形感覚が異なることがお分かりいただけると思います。


どちらがどうということもなく、それぞれに美しく、またカッコいいと感じます。

(この項つづく)

コメント

_ かすてん ― 2013年09月04日 20時48分17秒

私も製図に関しては中学校の技術家庭が最終学歴ですが、製図は好きでした。製図が好きなのは製図道具が好きだからかも知れません。さほど高価ではありませんが、1枚目の写真の点数くらいのセットを持っていた記憶があります。

_ ねこぱんち ― 2013年09月04日 22時54分53秒

英国式のは手術用みたく。

_ S.U ― 2013年09月05日 07時58分09秒

>製図に関する知識は、その中学時代に習ったことから一歩も進んでいない
 
玉青さんもかすてんさんも私も同類のようで、プロを除けば、工業・工学の学校や職業訓練、資格試験の勉強の経験がある人以外は大抵そうでしょうね。中学生の時に買った製図セットのコンパスとデバイダは、確かにドイツ式のデザインでした。

 ここで、また少しはずれて教育に関することになりますが、それでもその中学時代の製図知識は、自分が使う物のデザインを記録をしたり業者に示したりするには、十分に役に立っているのではないかと思います。ある意味、技術・家庭科のわずか10時間程度の製図の知識ほど、効率よく実用の域に達した教育は珍しいと言えそうな気までします。(でも、私らの時代は、女性にこの機会が抜けていたのですね)

 一方、測定や調査の結果などをグラフにして図示する技術(「棒グラフ」とか「折れ線グラフ」とかいう)は、中学校で学んだレベルでは、科学的表現としてもプレゼンの有効性から見ても実用からは相当隔たっていることをのちに知りました。中学校や高校の理科の時間に(数学ではない)グラフの書き方をもっと懇切に教えるべきではないかと思います。
以上は、私の個人の経験を一般化した推論ですのでバイアスがかかっているかもしれません。

_ 蛍以下 ― 2013年09月05日 12時50分48秒

私の中学時代(地方の公立)は80年代後半ですが、技術の授業で製図セットは買わされず、大工道具(金槌・のみ・かんな等)を買わされました。製図の授業ではただの鉛筆を用いたように記憶します。
技術・家庭科の男女共修はまだなされておらず、よっぽど保守的な教育風土だったんだなあと思います。男子は丸坊主だったし、今考えると人権侵害も甚だしいですね。

_ かすてん ― 2013年09月06日 07時16分22秒

>中学校や高校の理科の時間に(数学ではない)グラフの書き方をもっと懇切に教えるべきではないかと思います。
 そして、高校の理科では、理論ははともかく、誤差の考え方について少し教える方が良いと感じます。

_ 玉青 ― 2013年09月06日 20時20分44秒

皆さん製図と製図用具には、いろいろな思いがおありのようですね。

〇かすてんさま & S.Uさま

私は不器用なので、図面が上手に引けた記憶がまったくないのですが、何か必要があって物の寸法を図示するときには、今でもあのときの知識が大いに役立っています。その点ではS.Uさんがおっしゃるように、有り難い授業でした。
グラフについてはどうでしょう。プレゼンよりは(一生そういうのに縁のない人も多いでしょうから)、いわゆる「グラフにだまされるな」とか、誤差の概念も含めて、統計リテラシー的な内容とからめて教わると、益するところが大きいような気もします。

〇ねこぱんちさま

あはは。確かにそんな風に見えますね。
特定の分野で便利さを追求していくと、調理器具なんかも、あんな塩梅になりますね。

〇蛍以下さま

これは一寸意外なお話でした。確かに製図用具よりも大工道具のほうが、ある意味実用的でしょうが、上記のことを考えると、もうちょっと気合を入れて製図を学ぶ時間があっても良い気がしますね。それに、製図用具に伴うある種のカッコよさ(すいぶん偏ったカッコ良さかもしれませんが)に触れる機会がないというのも、何となく寂しいような…

_ S.U ― 2013年09月07日 11時14分29秒

かすてん様、玉青様、
>誤差の考え方について少し教える~「グラフにだまされるな」
 
 なるほど。これも大事なことですね。これは、単なるグラフの描き方よりもさらに難しく、自分の意図が正しく伝わるようにグラフを描くところまでは技術ですが、誤差を取り違えたり、だますだまさないの領域に入ると、不当表示や詐欺にもなりかねません。
 中等教育では(私は最近の動向には詳しくありませんが)、これを教える場が今はないのでしょう。数学で真面目に扱うと数学B、Cの内容になってしまって普及の役に立たないでしょうから、これもいっそのこと中学の技術・家庭科で教えるのがいいかもしれませんね。

_ かすてん ― 2013年09月07日 13時05分14秒

S.Uさん、玉青さん

>これもいっそのこと中学の技術・家庭科で教えるのがいいかもしれませんね。

受験科目でない技術・家庭科には教師の力を発揮できる余地が多少なりとも残っているのではないかと期待したいです。「生きるための技術・家庭科」。

_ 玉青 ― 2013年09月07日 20時32分16秒

S.Uさま & かすてんさま

今は小学校低学年に「生活科」というのがありますが、そうした生きるための技術・考え方は、むしろ中学校あたりで徹底的に習う方がいいのかもしれませんね。
いっそ、技術・家庭科は、社会を生き抜くための「サバイバル科」に再編してはどうでしょう。

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